日刊釣りペンクラブ相吉孝顕氏(89)とBS釣りビジョン「釣りうぇ~ぶ」MCの“おかまり”こと岡田万里奈が山梨・桂川で、渓流釣りに挑戦した。この日の本命は斑紋と流線形の美しい魚体から“渓流の女王”とも呼ばれるヤマメ。相吉氏は川相を見つつ餌釣りとテンカラ(毛針)を使い分け、おかまりはフライフィッシングで挑んだ。渓流界を黎明(れいめい)期から見続ける相吉氏の知識と技を目の当たりにしたが、その一端を紹介する。

相吉氏がまずポイントとして選んだのは、桂川支流の葛野川だった。「ここは瀬があってトロ場もあるし、魚が隠れられそうな場所もある。白波が立っている先の流れが対岸に当たっている場所あたりに魚がいそう」。89歳とは思えない足取りで川を渡り、お目当てのポイントを狙える場所に立った。

渓流における餌釣りは、カゲロウなど川に生息する川虫の幼虫やブドウ虫などを餌とする釣り方で、テンカラは川虫に似せた疑似餌を用いた釣法だ。「朝方は餌の方が良さそう」の判断でまずは餌釣り。餌はブドウ虫とピンチョロ(カゲロウの幼虫)を用意し、まずはブドウ虫を投入。だが反応がないとみるや川虫に変更。するとハヤがヒット。「魚はいるね」とにっこり。だが、その後掛かるのはウグイばかりとなった。

フライフィッシングで挑んだおかまりは、川相を見ると「すごくいいポイントで釣れそうな気がします。実際、魚もライズ(水面に飛び跳ねること)していますから」。だが、「川虫が飛んでいないので(フライを)沈めたいところだけど水深が浅い。悩ましい」と迷った結果、ドライフライを流した。「いかに自然に流すかが大事なんです。私も流れが遅い場所ならできるけど、速い場所は…」。しかし、結果はすぐに表れ、本命がヒット。「うれし~い!」と喜びを爆発させ、「相吉さんが餌を打ったポイントあたりで、餌が打てていない浅めのポイントを歩きながら投げていたら、1匹目が掛かったけど、アワセが遅くなってしまいバレてしまいました。でも『この辺にはいる』と思って投げたら、掛かりました」。

葛野川の上流を攻めた後、本流梁川地区のポイントに移動。アユの友釣りでも名高い場所だ。川相をチェックすると、「うわ~、魚がいそう。ここいいかも!」とテンションが上がるおかまり。その予感通り、流心で本命を掛けた。

これを見た相吉氏は「僕は下流を攻めてみます」。川の真ん中に大きな岩があり、その手前にできた中州の先に餌を打った。最初はピンチョロだったが、何度か投げるとブドウ虫に変更。すると、流れていたハリスが止まった。すかさず合わせるとサオ先がクンとしなった。掛かったのはイワナだ。桂川漁協の細田充氏は「イワナの成魚は放流していないので天然物ですね。最近イワナは少なくなっているので、貴重な1匹です」。相吉氏は「移動途中に新しい足跡があったので、誰かが先にやっている可能性があると思った。だとすれば『ピンチョロを使っているはず』と考えてブドウ虫に変えたらすぐに掛かった」と餌を変更した理由を説明。随所を観察し、本命ゲットのためのヒントを探り結果に結び付ける。まさに“ベテランの技”だ。「アタリが何回かあったのでヤマメではないと。何度もアタックして来るのでイワナだと思っていました」。

渓流釣りの魅力は「四季を感じながら釣りをできること」と相吉氏は言う。「藤の花が咲くころからは“一里一匹”と言って、ヤマメ釣りは難しくなります」とし、「自分の狙ったポイントで思い通りに釣れれば喜びも大きいですが、思い通りにならないのも釣り。僕は1日やって10回アタリがあって、5匹釣れれば満足です」と話した。

本命3匹ヒットのおかまりは「相吉さんとの釣りは4年ぶりで楽しかった。お元気そうで何よりです」と笑みを浮かべた。桂川については「川相がいいので、おかまりチャンネルでまた来ます!」と再訪を誓った。【川田和博】

■相吉氏の渓流ポイント

▼渓流釣りの基本 「川下から入って、川上に釣りのぼっていくのが基本。まず川相を見て、安全に徒渉できるポイントを探すのが大事」。

▼徒渉スタイル ウエーダー、タモ、帽子はもちろん、リュックには「飲み物、カッパ、非常食などを携帯しています」。

▼ポイントをつぶさない 「魚は警戒心が強いので魚が驚くような動きは厳禁。淵やトロ場、瀬でも魚を走らせてしまうとポイント全体がダメになってしまうので、細心の注意が必要です」。

▼ポイント選びのコツ 「水の流れを見て、魚が隠れられそうな流れを見極める。例えば、白波が立つ瀬頭の川岸側には流れがぶつかって緩くなるところができるので、そんな場所を探すといい。川岸のアシ際も魚が隠れやすい」。

■渓流釣り、主に4種類

渓流釣りには主に4つの釣り方がある。相吉氏が行った「餌釣り」「テンカラ」とおかまりの「フラフィッシング」と「ルアー釣り」だ。餌釣りは、魚が常に食べているであろう川虫や川虫の幼虫などを餌にする釣り方で、「テンカラのように吐き出さないので大きなアワセは不要」と相吉氏。テンカラは川虫に似せた毛針を用いた釣りだが、同じく毛針を使うフライフィッシングとの差は、リールがないこと。つまり、テンカラは“和式フライフィッシング”だが、「流れが速く、狭い日本の渓流に適した釣り方です。日本の伝統的な釣り方なので、後世に伝えていきたいですね」。

フライフィッシングはリールを用いて、より遠くに毛針を投げられるのが特徴。ルアーは小魚の疑似餌を用いた釣法だ。

■おかまりの「フライの基本」

▼フライフィッシングの基本 「ルアーはルアーの重みで飛ばすが、フライフィッシングは糸の重みで飛ばす」。

▼フライの種類 「大きく分けて“ドライ”“ウエット”の2種類。ドライは水面に浮き、ウエットは沈むタイプ」。

▼ドライフライの釣り方 「基本的にはポイントを選んだら水面にフライを流す釣りになります。流れるフライに食いつくのが見えるので、食いついたら合わせる」。

▼フライの流し方の注意点 「自然に流すのが大切。ラインが先に流されるとフライは自然界のモノと違う流れ方になってしまい全く食ってくれません」。