円良田湖では桟橋やボートで思い思いにワカサギを狙う
円良田湖では桟橋やボートで思い思いにワカサギを狙う

冬場のお手軽レジャーといえば、埼玉・円良田湖(つぶらたこ)のワカサギ釣りだろう。ヘラブナ釣りで有名な人造湖で、すっかり冬のお楽しみとして定着した。好きな時間に桟橋に入ってのんびり釣り糸を垂れてもいいし、ボートで淡い陽光を浴びながら楽しんでもいい。まさに「安(安い)」「近(近い)」「短(短い)」「楽(楽しい)」。レジャーのキーワードがちりばめられている。そのうえ、食べてもおいしい。ドライブがてら出かけてみては?

東京都心から車を90分も運転すれば円良田湖にたどり着く。ボート代も2600円。近い距離と安い値段、短い滞在で楽しく釣りをして、夕食が調達できる。円良田湖のワカサギ釣りには、手軽な要素が詰まっている。

実際、旅館前や梅林、梨の木の各桟橋で毛布や寝袋にくるまったりしている。ポットに持参したお湯を入れ、カップラーメンをすすりながら狙う。トイレは湖畔の沿道に設置されている。家族でやって来て群れに当たって早々に大釣りしたら、「予定数終了」でさっさと納竿してもいい。ボートなら羅漢岬や梅林といった湖心のカケアガリなどの底付近(水深約18~20メートル)で誘う。思い思いの釣りができるのがうれしい。

ボートで羅漢岬の底を中心に狙っていた地元埼玉県寄居町の棚山林(しげる)さん(57)は、「午後1時までに100匹釣れたので上がってきました」と話した。自宅から近いため、ボートで出たり、桟橋で楽しむという。「桟橋なら足場が安全だから、初心者でも楽しめる。サオは2本出せますし、まずは違うタナで仕掛けを入れて、アタリが出た方のサオに狙うタナを統一すればいいです。魚群探知機(魚探)を持参している人にも気軽に尋ねて、情報をみんなで共有してもいいです」(棚山さん)。

100匹以上釣って引き揚げてきた棚山林さん
100匹以上釣って引き揚げてきた棚山林さん

同じような場所でボートで釣っていた蝦名克信さん(63=埼玉県上里町)は、北海道から引っ越して3年目。「ワカサギは厳冬期の穴釣りというイメージだった。ボートで楽しめるのは楽しい」と語った。食い渋りの状況が多かったが、6号のオモリを4号に落としたり、持参した釣り鐘オモリを取り出して、オモリの下からハリスを通して狙った。

ほかの釣り客も、白サシや赤サシといったエサをハサミで半分に切ってエキスを出して誘うとか、オモリが着底してもベタッと置いたままにして、ワカサギが針がかりして道糸が横などに動いた時に合わせるなど、さまざまな手法を駆使していた。

今シーズンは、昨年夏の段階から「魚影が濃い」と前評判が高かった。桟橋などから見下ろしても、黒い魚体が見えるほどだった。「卵を2000万粒ほどを放流し、それがしっかりふ化したのが大きい」。湖を管理する寄居町観光協会の芝宏事務局長(77)は強調する。

昨年11月1日のスタート時点ではタナ(魚の遊泳層)もバラバラだったが、年末年始あたりの冷え込みで底付近に群れが定着し始めた。今年に入り、1月下旬あたりは抱卵期で活性が低くなったが、2月に入って上向き始めた。3月9日のワカサギ最終日に向け、ラストスパートだ。

かつては長野・諏訪湖、北海道網走市から卵を買い付けていた。7~8年前から山梨・河口湖で稚魚を購入し始めた。これがうまく育った。放流数も4000万~6000万粒と多めにしたシーズンもあったが、かえって酸欠を起こすなど試行錯誤を繰り返した。関東屈指のヘラブナ釣り場が、冬の初心者の釣り入門編として確実にファン層を広げている。

まとまった休みを使って外海に遠征したり、民宿に連泊して釣りをするのもいい。こんな形でフラリとやってきて、好きな時間だけ楽しんだり、「予定数終了」なら早く上がる釣りがあってもいい。【赤塚辰浩】

◆円良田湖(つぶらたこ) 埼玉県寄居町と美里町にまたがる、かんがい用の人造湖。寄居町観光協会が完全管理している。1942年(昭17)に工事に着手し、55年完成。現在は農業用水として利用されている。周囲4・3キロ、湖の面積は約11万平方メートル。鐘撞堂山(かねつきどうやま)と大槻峠に囲まれた谷間にあり、桜や新緑、紅葉の季節はハイキングを楽しむ人が多い。最大深度18メートルで、地底には木の根やガレキが多く、カケアガリが多い。春から秋にかけては、関東有数のヘラブナ釣り場として多くのファンが訪れる。

円良田湖釣り事務所ではエサなども販売
円良田湖釣り事務所ではエサなども販売

成熟早く繁殖力高い

ワカサギは、キュウリウオ目キュウリウオ科。北太平洋のアジア沿岸や北米沿岸に分布する。冷水性の食用魚。水温、塩分などへの適応範囲の広さ、富栄養化に対する強さから、日本全国の湖沼や人工湖などに移され、放流されている。成熟が早く繁殖力も高い。寿命は一般に1年。北海道や長野県などの寒冷地では2年魚、3年魚も見られる。成魚は体長15センチほど。背面は淡い青色、腹側は銀白色で、側面には淡い黒色の縦帯があるのが特徴。卵の直径は約1ミリ。1匹の産卵数は1000粒から2万粒。

茨城・霞ケ浦、長野・諏訪湖、滋賀・琵琶湖などでは漁業の対象にもなっている。甘露煮や天ぷら、フライ、南蛮漬けなどのメニューにもなる。漢字で「公魚」と書くのは、江戸時代に常陸国麻生藩(現在の茨城県行方市)が11代将軍の徳川家斉に年貢として霞ケ浦のワカサギを納め、「公儀御用魚」とされていたとの説がある。また、神奈川・芦ノ湖のワカサギは「宮内庁御用達」でもある。


温暖化で穴釣りに影響

ワカサギといえば冬場の結氷期、湖面にドリルなどで直径20センチほどの穴を開けて仕掛けを落として釣る「氷上の穴釣り」が全国各地の風物詩となっていた。北海道、東北の湖や、長野・野尻湖や松原湖、山梨・山中湖などで行われていた。地球温暖化の影響で、張る氷の厚さが薄くなったため、できる場所が限られたり少なくなり、期間も短くなっている。


地元の名産も販売

釣りの受け付けを行う管理事務所を出て左の下り坂を歩くと、途中の左側に生産者直売所「円良田湖畔の小さなお店」が見えてくる。2020年(令2)に、地元の寄居町観光協会がオープンさせた。釣り具だけではなく、地元で採れた季節の野菜やくだもの、お菓子、埼玉銘茶「狭山茶」などを販売している。駐車場も完備しているので、釣りの帰りに家族へのお土産などを買い求めてもいいだろう。

営業時間は午前8時30分から午後4時。

生産者直売所「円良田湖畔の小さなお店」では地元の野菜や果物なども販売
生産者直売所「円良田湖畔の小さなお店」では地元の野菜や果物なども販売

▼問い合わせ 円良田湖釣り事務所【電話】048・581・8511。

▼料金 桟橋釣り=1日2100円、女性と高校生以下は800円。午前11時からの半日釣りは1100円。ボート=1人乗り2600円、2人乗り3500円。

▼時間 桟橋は午前6時、ボートは午前6時30分開始。納竿は午後3時30分。ボートは午後4時までに桟橋に帰着すること。

▼車 関越道花園インターまたは寄居スマートインを利用。週末の夕方は、秩父方面から国道140号を経由して花園インターへと向かう車で交通量が多い。ETC搭載車は、国道254号に抜けて寄居スマートインに向かうと便利。

円良田湖の周辺道路では「わかさぎ釣り」の看板やノボリを立てて釣り人を歓迎
円良田湖の周辺道路では「わかさぎ釣り」の看板やノボリを立てて釣り人を歓迎
協力店
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