医師で作家の鎌田實さん(67)が、日常生活のちょっとした工夫で健康になり、10歳若返るヒントを教えてくれます。

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 日本では長い間、「コレステロール」に対する誤解があった。卵や肉、油などコレステロールをたくさん含むものは、健康の敵であるかのように、とりすぎないように指導されてきた。

 従来のコレステロールの1日の摂取基準値は男性は750ミリグラム未満、女性は600ミリグラム未満とされていた。コレステロールは卵1個でおよそ235ミリグラムになるから、「卵は1日1個まで」などと言われてきたのだ。

 これには悔しい思いをした人も多いだろう。ラーメン屋でうまそうな味付け卵を泣く泣くあきらめた人もいるかもしれない。食い物の恨みというのは積もり積もればけっこうなストレスになる。かえって体に悪い、というのがぼくの持論だ。

 それに、卵や肉にはタンパク質も含まれ、細胞をつくる大事な材料になる。戦前の日本人は、タンパク質が不足していたために、血管が破れる脳出血が多かった。

 厚生労働省は2015年、コレステロールの摂取量の基準値を撤廃した。日本動脈学会も、食事内容に注意しても、体内のコレステロール値は大きく変わらないと発表した。つまり、「卵は1日1個まで」というような食事制限をしてまで、コレステロールを排除する必要はないということだ。

 もともと日本脂質栄養学会は、コレステロールの数値が高い人はむしろ長生きであると主張していた。ぼくも、これに賛成である。コレステロールは、食事制限したり、すぐに薬に頼ったりするよりも、運動で体重を減らすことで下がることがわかってきた。

 もう味付け卵は我慢しなくていい。でも、食べたら帰り道は1駅分、歩いて帰ろう。

 ◆鎌田實(かまた・みのる)1948年(昭23)6月28日、東京生まれ。東京医科歯科大医学部卒業後、長野県茅野市にある諏訪中央病院の医師になる(現在は名誉院長)。チェルノブイリ原発事故の患者支援、イラク難民支援を続け、東日本大震災後の被災地支援にも力を入れている。著書「がんばらない」など多数。