医師で作家の鎌田實さん(67)が、日常生活のちょっとした工夫で健康になり、10歳若返るヒントを教えてくれます。

 ◇ ◇

 免疫力を上げれば、がんにもなりにくくなり、風邪もひきにくくなる。

 そもそも免疫とは何か。免疫は、「自己」と「非自己」つまり、自分と自分以外のものを識別して、自分以外のものを外敵として排除する働きのことだ。

 自己と非自己を識別するなんて、とても哲学的だ。僕たちの体は60兆個の細胞でできているが、そのうちの2兆個が免疫細胞といわれている。

 毎日5000個の細胞が傷つき、がん化しかかるといわれているが、免疫細胞が攻撃することで、がんになるのを防いでくれている。だから免疫はとても大事。

 免疫力は、高ければ高いほどいいのだろうか。いや、そうでもない。免疫力はほどほどが大事なのだ。

 免疫力は高すぎると、別の問題が生じる。アレルギー反応が起こりやすくなる。自分の細胞を「非自己」とみなして攻撃してしまう。これは自己免疫疾患という。リウマチなどの膠原(こうげん)病がその典型だ。

 サラリーマンが、ストレスで円形脱毛症になることがあるが、これも免疫の異常で起こるともいわれている。

 ほどほどの免疫を保てないのは、清潔すぎる環境が問題だ。無菌状態の環境で育ったマウスは免疫の働きが悪く、短命だといわれている。

 子どもも、外で泥だらけになって遊ぶことが、健全な免疫を獲得するうえで大事な体験になるが、都会ではそれも難しくなっている。

 子どものときにしっかりした免疫力をもつと、高齢者になるまで、バランスの良いほどほどの免疫力が確保されるといわれる。抗菌グッズに頼り過ぎにも要注意。

 ◆鎌田實(かまた・みのる)1948年(昭23)6月28日、東京生まれ。東京医科歯科大医学部卒業後、長野県茅野市にある諏訪中央病院の医師になる(現在は名誉院長)。チェルノブイリ原発事故の患者支援、イラク難民支援を続け、東日本大震災後の被災地支援にも力を入れている。著書「がんばらない」など多数。