医師で作家の鎌田實さん(67)が、日常生活のちょっとした工夫で健康になり、10歳若返るヒントを教えてくれます。

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☆テーマ「幸せホルモンは増やせる」

 うつ病が100万人いるといわれている。7人に1人はうつ傾向だという専門家もいる。経済が足踏みをして、仕事が思い通りにならず、うつ的な気分になってしまう人が多い。職場の中にも1人や2人、そういう人もいるだろう。

 うつ病と神経伝達物質のセロトニンは深い関係がある。セロトニンは幸せホルモンともいわれる。うつ病の治療薬でよく使われるものは、脳内のセロトニンの濃度を高めるものである。うつ病の人は医師に相談し、きちんと薬を飲まなければならない。

 しかし、うつ傾向があるという程度の人は、食事を工夫してセロトニンを増やそう。

 セロトニンの材料は必須アミノ酸のトリプトファン。チーズや牛乳、卵、肉、赤身の魚、バナナなどに含まれている。

 こういったものを食べて、感動することが大事だ。窓から夕日がきれいに見えたら、「きれいだな」と声を出してみる。「忙しいんだから、夕日なんか見ている場合か」なんて上司が言う職場は、生産性が上がらない。

 上司も手を止めて「おう、今日の夕日はきれいだな」などと言う職場にはきっといい空気が流れている。一瞬のほっとする時間。5秒くらいの小休止だが、それで仕事が遅れるなんてことはない。

 むしろ、夕日に感動したことでセロトニンが分泌され、幸せな気分になる。仕事にも意欲がわいてきて、生産性が上がる。幸せホルモンを出したほうが仕事がはかどるのだ。

 セロトニンは、朝、日光に当たることでも分泌される。1日のスタートドリンクに、トリプトファンたっぷりのバナナとヨーグルトとあり合わせの野菜を入れたジュースがお勧め。

 ◆鎌田實(かまた・みのる)1948年(昭23)6月28日、東京生まれ。東京医科歯科大医学部卒業後、長野県茅野市にある諏訪中央病院の医師になる(現在は名誉院長)。チェルノブイリ原発事故の患者支援、イラク難民支援を続け、東日本大震災後の被災地支援にも力を入れている。著書「がんばらない」など多数。