医師で作家の鎌田實さん(67)が、日常生活のちょっとした工夫で健康になり、10歳若返るヒントを教えてくれます。

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 「人間は浮かれていないほうがいいが、ウンコは軽く浮いているほうがいい」ぼくは講演でこんなことを言う。食物繊維が少なかったり、便秘ぎみで水分が少ない大便は、水に沈みやすい。だから、水にほどよく浮く大便は、腸が健康で、野菜やキノコ、海藻をたくさん食べて、食物繊維をよくとっているかどうかの1つの目安になる。

 排せつ物をよく観察することは、とても大事な健康管理。しかも、一銭もかからないで、だれでも簡単にできる健康チェックだ。

 ヨーグルトなどを作っているある企業がおもしろい調査をしている。全国47都道府県の20~50代の男女1万人以上を対象に、太くてバナナのような便が出るか、色はどうか、軟便や、石のように硬いかなどを調査した。

 それによると、腸内の劣化が進んでいるのは山形県。ついで福島県、石川県という結果になった。反対に腸内環境が一番よかったのは、ぼくが住んでいる長野県だった。

 腸内環境が悪いと、排便時間が長くなったり、便の臭いがひどくなったりする。トイレの時間が長いのは大阪府、臭いでケンカになることが多いのは埼玉県という結果になった。大便が、家族の不和にも影響するとしたら、放っておけない問題だ。

 さて、腸内環境をよくするにはどうしたらいいだろうか。3つのことが大事である。

 1つ目は食物繊維の多いものを食べる。野菜、海藻、キノコ、コンニャクなどだ。2つ目は発酵したものがいい。乳酸菌や納豆菌、コウジ菌、酵母菌など。いろんな善玉菌を体に入れることが大事だといわれている。3つ目は運動。歩くことで腸の蠕動(ぜんどう)運動が促される。快便を目指そう。

 ◆鎌田實(かまた・みのる)1948年(昭23)6月28日、東京生まれ。東京医科歯科大医学部卒業後、長野県茅野市にある諏訪中央病院の医師になる(現在は名誉院長)。チェルノブイリ原発事故の患者支援、イラク難民支援を続け、東日本大震災後の被災地支援にも力を入れている。著書「がんばらない」など多数。