性感染症が心配だからといって医者にかかるのは敷居が高い。そんなふうに考える人も少なくない。東京都内に住む30代の某男性は、転職がきっかけで風俗通いにハマッてしまった。「忙しさもあって付き合っていた彼女とは破局してしまった。そのストレス解消にと、ピンサロ、ヘルス、ソープにと行きまくっていたら、性器に異常が。ネットをみると検査してくれるところがたくさんあってすぐ注文しましたよ」と苦笑い。結果的にはヘルペスと梅毒が見つかったという。

 幸い、医療機関を受診して大事に至らずに済んだ、いまはおとなしくしているが、また利用するかもしれないと話す。「最初から医者にかかるのってやっぱりハードル高いでしょ。好きな時間にできるし簡単なのでちょうありがたい」(某男性)。

 こうしたサービスは民間の会社が行っている「郵便検査」「検査キット」などと呼ばれている。HIV(エイズ感染)がわかるもの、梅毒やクラミジアなどの性感染症がわかるものなどさまざまな種類が数社から売られている。

 実はこうした実態を調査しようと厚生労働省の研究班が報告をまとめている。それによると昨年、郵送式による「HIV検査キット」は9万807件も利用されていたことがわかった。郵送検査の値段は複数の病気がわかるものを含めて数千円から1万円前後。市場は年々増加傾向にあり、保健所での検査数と肩を並べるほどになっている。

 ある病院で性感染症の治療にあたる医師はこう話す。「実際、郵送検査で陽性になったからと、受診してくる患者さんは少なくありません。早期発見、早期治療のきっかけになっていると思います」。