国立国際医療研究センター「エイズ治療・研究開発センター」岡慎一センター長への特別インタビュー第2回。近年はウイルス量を検出限界以下に抑制できる抗HIV薬によりHIV感染者の予後に劇的な変化をもたらした。感染拡大を防ぐためにも早期発見、早期治療が求められている。

 -治療を受けてウイルス量が低くなると普通の生活が送れるか?

 岡氏 そのとおりだ。パートナーを感染させることもない。しかし、エイズを発症してからでは遅い。もし、後遺症で寝たきりになると、面倒をみてくれる親は老人であり手に負えない。最期は悲惨な結果となるのは目にみえている。それが実態だ。

 -検査を受ける人がまだ少ないか

 岡氏 検査を受けるか受けないかで、個人と社会のメリットはきれいに分かれる。しかし本当の阻害要因は差別と偏見ではないだろうか。治療ができる時代になったのにかかわらず、この病気は世間からそういう目でみられてしまう現実がある。

 -例えば「検査へ行ったことが他人にばれると怖い」といったことか?

 岡氏 そう。もっと検査の敷居を低くして誰もが検査できるようにならないといけない。

 -予防薬とは?

 岡氏 米国では保険で認められている。すでに世界では何万人もの人が飲んでいる。なぜそんなことをするか。病気になってから治療するよりもコスト効果が高いからだ。もちろん全員が飲む必要はなく、リスクが高い人が飲めばいい。

 -エイズが変わったのか?

 岡氏 いや、病気そのものは何も変わっていない。治療が進歩した。いまは1日1回1錠飲めばエイズ発病を予防し、病気をコントロールできる時代になった。街のクリニックで治療ができる。近い将来はもっと進歩するはずだ。(続く)