<狭心症・心筋梗塞(3)>

 虚血性心疾患の代表として知られている「狭心症」と「心筋梗塞」。その心筋梗塞を起こした時に、合併症をもたらすことがあります。たとえば「心室中核裂孔」「乳頭筋断裂」などです。これらは、ある日、突然にパッと冠動脈が詰まってしまった人に多く発症する合併症です。

 心室中核裂孔は、心筋梗塞によって心臓の右心室と左心室の間の壁が壊死(えし)して穴が開き、心筋梗塞による状態をさらに悪化させて破裂することもあります。また、乳頭筋断裂は僧帽弁を支えている乳頭筋が切れて僧帽弁が逆流してしまう合併症です。どちらも死を覚悟する合併症です。

 その一方で、自然に死を防ぐことができているケースもあります。それはゆっくりと起こる狭心症のケースです。冠動脈は右冠動脈と左冠動脈があり、左冠動脈はすぐに前下行枝と回旋枝(かいせんし)に分かれます。その前下行枝にかなりゆっくりと狭窄(きょうさく)が起きると、その周辺の筋肉への酸素と栄養の供給が不足してしまいます。それを救おうとして新しい血管(新生血管)が誕生するのです。すると、前下行枝の狭窄部がついに詰まってしまったとしても、症状は出にくいのですが、死に至ることはありません。新生血管がバイパスの役割をしているからです。

 このように誰もがうまくいくわけではありません。ハートでハッとすることがほとんどです。だから、しっかり定期検査は受けて、自分の心臓の状況は把握しておきましょう。(取材・構成=医学ジャーナリスト松井宏夫)

 ◆僧帽弁 心臓には僧帽弁、大動脈弁、三尖(さんせん)弁、肺動脈弁の4つの弁があります。この中で全身に影響を及ぼすのが僧帽弁と大動脈弁。肺でガス交換された血液は、肺静脈を通って左心房に入り、心房が収縮して左心房と左心室の間にある僧帽弁が開いて、心臓のメインポンプの左心室に血液が流れ込む仕組みになっています。