不整脈<10>

 心臓の拍動に乱れが生じる不整脈には、「頻脈性不整脈」と「徐脈性不整脈」があります。拍動のリズムが速くなる心房細動や心室細動に代表されるのが、頻脈性不整脈。逆に拍動のリズムが遅くなるのが徐脈性不整脈です。今回は徐脈性不整脈を紹介します。

 徐脈性不整脈の代表が、「洞不全症候群」や「房室ブロック」。洞不全症候群は、心臓の右心房の上部にある洞結節部分の細胞に異常が生じ、出るべき信号が極端に少なくなったり、出なくなったりする状態です。一方、房室ブロックは、重要な信号は発信されるのですが、心房から心室に信号が届かない。心房と心室の橋渡しが、きちっとできていないのです。

 これらの不整脈が起こると、血液の送り出しが極端に遅かったり、送り出せなかったりします。そのため、疲れやすくなったり、息切れしたりといった心不全の状態、さらには意識がなくなったりしてしまいます。「脈拍が5秒止まるとめまいを起こし」、「10秒止まると失神を起こし」、「20秒止まると全身けいれんを起こす」。そして、「3分止まると脳死に至る」のです。

 徐脈だからといって、すべてこのような状態になるわけではありません。自覚症状のない段階の徐脈であれば、状態をチェックしていく経過を観察で対応することになります。ただ、心不全の状態やめまいを起こしたり、失神したりする場合には、薬物療法もありますが、安定した治療効果の点からは、ペースメーカーを植え込むことになります。ペースメーカーは脈が遅くなった時に、自分の心臓に代わって信号を出して徐脈を改善する機器なのです。

(取材・構成=医学ジャーナリスト松井宏夫)