<心臓弁膜症(10)>

 心臓の弁が正常に機能しなくなる心臓弁膜症の中で、手術が最も多い「大動脈弁疾患」。その手術方法として、4つが行われています。「人工弁置換術(機械弁)」「人工弁置換術(生体弁)」「自己心膜を使用した大動脈弁形成術(尾崎式)」の3つは紹介しましたので、今回は4つ目の「TAVI(タビ=経カテーテル大動脈弁留置術)」を紹介します。

 ◆TAVI 2002年にフランスで開発された治療法で、日本では13年から保険適用になりました。4つの手術法の中でTAVIだけが、施設によっては心臓外科が行うのではなく、循環器内科が対応する内科的治療です。

 TAVIの治療は、脚の付け根の大腿(だいたい)動脈からのアタックが多く行われています。留置する生体弁を付けたカテーテル(細い管)を挿入し、問題が生じている大動脈弁の位置まで到達させます。そこでバルーンを膨らませると、生体弁が開いて大動脈弁の場所にセットされます。新しい弁に置き換わるのです。この時点から、TAVIの生体弁は新しい大動脈弁として機能します。あとは、カテーテルを抜き取って、その部分を止血すると治療は終了。身体にやさしいカテーテル治療のひとつです。

 ただ、脚の大腿動脈から、血管が細すぎるなどで挿入できないケースもあります。その場合は胸を小さく切開し、心臓の先端から生体弁を挿入する方法などがとられます。また、TAVIでは、治療後に血栓のできるのを防ぐ抗凝固薬を服用する必要があります。

 このTAVIは、大動脈弁疾患の患者さんであればだれでも対象になるのではありません。「80歳以上の高齢者で手術に耐えられない」「合併症のために手術の適応がない」など、条件を満たしていると、TAVIの適応となります。(取材・構成=医学ジャーナリスト松井宏夫)