<心筋症(3)>

 心臓移植の対象疾患として、あまりに有名な心筋症。その疾患の多くは、心筋が薄く伸びきってしまう「拡張型心筋症」と、心筋が肥厚してしまう「肥大型心筋症」です。心筋症を早く発見するためにも、発症するとどのような症状が出てくるのか、知っておくことが大事です。

 極めて軽度な状態では、その症状が出てこない人もいます。基本的には、心不全の症状と共通するところが多いのです。血液が十分身体に行き渡らないので、「動くと息切れがする」。全身の血管に血液の停滞が起きているので、「脚がむくむ」とか「全身にむくみが出る」といった症状が出ます。また、肺うっ血が起こるので「横になると息苦しい」「あおむけに寝ると息ができない」「風邪でもないのにせきやたんが出る」など、いろいろ出てきます。

 これだけ症状があると、患者さんはすぐに「何か変だなー」と気付きそうに思います。ところが、なかなか気付かれないのが現実です。症状を言葉で書くとはっきりしますが、実はそれらの症状は、はっきりと出にくいという特徴があるのです。だから、症状に気付いた時には重症になっていることが多いのです。かつては、5年生存率が50%と言われていました。

 「このままでは死んでしまいますよ」と循環器内科医が患者さんに話しても、患者さんは十分に理解できないことが多い。この状態になると患者さんは腎臓、肝臓も悪化しており、内科的治療だけでは多臓器不全になってしまいます。多臓器不全になる前に手術が行われると、90%以上の患者さんは元気を取り戻すことができます。患者さんと内科医との十分なコミュニケーションが重要で、大いに健康長寿に影響することを知っておくべきでしょう。(取材・構成=医学ジャーナリスト松井宏夫)