<心筋症(5)>

 心筋症と診断がつくと、前回ご紹介したように、まずは「薬物療法」「生活指導」「食事療法」となります。薬物療法は大きく進歩しましたが、やはり薬物療法は残念ながら対症療法であって根治療法ではありません。

 心筋症には「拡張型心筋症」「肥大型心筋症」「拘束型心筋症」の3つのタイプがあります。その中の肥大型は心臓の壁が肥大化したタイプです。これは、不整脈が出ることはあっても、心臓のパワーが保たれていることが多いのです。この肥大型の場合で、大動脈への通り道が狭くなる「閉塞(へいそく)性肥大型心筋症」では、手術ではなく、カテーテルを使った内科的治療が“身体にやさしい治療”として選択されるようになってきました。

 薬物療法で効果がなく、高齢、また他の疾患などで手術を受けることができない患者さんには、良い選択肢になっています。

 この治療は「経皮的中隔心筋焼灼術(PTSMA)」と言うカテーテル治療で1990年代からヨーロッパで行われ始めました。治療は局所麻酔で行います。患者さんの脚の付け根の2本の動脈、1本の静脈から心臓にアタック。1本の動脈から左心室にカテーテルを通し、左心室の圧を持続的に測ります。もう1本の動脈からは肥大化している左心室と右心室を分ける心室中隔という壁の動脈、中隔枝にバルーンのついたカテーテルを入れます。

 そこでバルーンを広げて動脈を遮断。バルーンの先から高濃度エタノールを注入します。すると、肥大化していた心筋が壊死(えし)して薄くなります。静脈からのカテーテルは治療中に不整脈が起きた場合の対応策として、一時的にペースメーカーを挿入しておくのです。2時間程度で終了します。(取材・構成=医学ジャーナリスト松井宏夫)