<たこつぼ型心筋症(4)>

 緊急で運ばれた患者さんをしっかり検査していくと、たこつぼ型心筋症の確定診断に結びつけることができます。その検査は狭心症や心筋梗塞と同じ。心電図や血液検査を行い、次に心臓超音波(エコー)検査を行うと、左心室の収縮低下に気付きます。その収縮低下の原因を調べるために「冠動脈造影検査」を行うことになります。

 この検査は、特殊な細い管(カテーテル)を使う検査。カテーテルを手首、もしくは肘の動脈から冠動脈の入り口にまで挿入。次に、カテーテルの先端から造影剤を注入して、エックス線撮影をします。すると、冠動脈が正常なことが分かりますが、その後に行う左心室造影では、左心室が「たこつぼ型」になっていることがはっきり確認できます。この画像を見ると、医師でなくともたこつぼ型心筋症と分かるほど、明確な画像です。だから、確定診断ができます。

 治療は原因となっているストレスを取り除くために、入院して行われます。1~3週間程度の安静入院をするだけで、たこつぼ型心筋症は自然と改善されることが多い。もちろん、患者さんに動脈硬化があればそれに対応し、心不全があればそれにもしっかり対応します。

 さらに、この病気はストレスが大きく関与する心の疾患なので、心理療法士によるカウンセリングを行って、患者さんの心のケアにも努めます。たこつぼ型心筋症は、患者さんの心臓と「こころ」の関係をはっきり教えてくれる典型的な疾患といえます。(取材・構成=医学ジャーナリスト松井宏夫)

 ◆たこつぼ型心筋症 突然の胸痛に始まり、狭心症や心筋梗塞の症状と似ています。この症状は、過度のストレスで心臓の左心室が大きく変化します。左心室がたこつぼ型になり、血液を十分に送り出せなくなります。