私は化粧品や皮膚用医薬品の開発もしている立場上、喫煙者にはすぐに気づく。においもさることながら、「肌」にもその特徴が出るからだ。皮膚はもっともストレスが現れる場所、臓器であり、そのストレス要因の1つがたばこなのだ。日本禁煙学会での宮崎博隆先生の発表によると、20~50代、約18万人の皮膚を調査し、喫煙者と非喫煙者で比較したところ、喫煙者のほうが角層細胞のメラニン量、かさつき、かゆみ、毛穴、にきびなどの肌トラブルが多いことがわかった。また、ポーラが女性約30万人を対象に調査したところ、全体の23%である喫煙者とそれ以外の人で、やはりメラニン量に大きな差が出たという。

20代では差が小さいが、それ以降の全年代で、喫煙者のメラニン量は1~2割多く、それぞれ5歳上の非喫煙者のメラニン量に相当するそうだ。つまり、メラニン量については「喫煙者の肌は5歳老けた状態」というエビデンスが存在しているということだ。いくら日焼け止めを塗っていても、喫煙によってメラニン量が増加すればくすみやシミの元となる。加えて、喫煙者は顔全体がくすみ、血流が悪くうっ血しているような顔色に感じられることが多い。「スモーカーズ・フェイス」という言葉があるくらい、喫煙者の顔には顕著な変化が起きているのである。

ではなぜたばこは人を老けさせてしまうのだろう? その代表的な原因が「血流の悪化」だ。たばこ成分中のニコチンには血管を収縮させる作用があり、脳や皮膚の血流を悪化させてしまう。皮膚の血流が悪くなると、栄養も行き届かず、皮膚組織の細胞の活動が弱まる。その結果、健やかな皮膚であれば自然に生み出されるはずのコラーゲンやヒアルロン酸などが生成されなくなり、シワ・たるみの原因になるというわけだ。しかもその害は受動喫煙でも同様に起きてしまうため、身近に喫煙者がいる場合も要注意。世界中で禁煙の流れが加速しているが、これは美容の面からいっても歓迎すべきことだ。肌は内臓の鏡と言われ、肌に悪影響が出るものは体全体の健康被害にもつながると言われる。健やかな肌から健康を目指していきたいものだ。