これから50年後に日本の人口は8000万人になると言われている。1億2000万人から4000万人以上減り、しかも少子高齢化という問題を伴って進行するために、減るのは若者ばかり。GDPは200兆円も減少する一方、平均寿命は着実に伸びる。世界最長寿の国のリーダー格である日本は、きたる人生100年時代に向けてどのような対策をすればいいのだろうか。

▼まず立ちはだかる壁は認知症だ。厚生労働省の調査によれば、2013年の時点で予備軍も含めた認知症高齢者は800万人に上るとされている。少子高齢化と同時に認知症が阻止できなければ社会の破綻は目に見えているが、医薬品で克服してきたこれまでの疾患とは大きく異なり、現在、製薬企業による認知症の治験は非常に厳しい現状にある。逆に言えば、認知症こそかかる前の「予防」が重要、という新視点が必要だ。認知症には10~20年かけて徐々に進行すると言われるアルツハイマー型をはじめ、いくつかの種類があるが、予防のための大切な要素は驚くほどシンプル。<1>適度な運動<2>バランスのいい食事<3>ストレスオフな生活。<1>、<2>については語られる機会も多いが、ここでは<3>のストレスオフな生活に照準を定めてみよう。

▼注意したいのは「ストレスフリー」ではないこと。つまり、ストレスを排除するのではなく、適度な負荷はかけたほうがいいという発想である。以前も述べたが、無菌室で飼育した動物は、一般環境下では死んでしまう。適度にストレスにさらされることが体本来の機能を高める重要な要素なのだ。その代表的なシステムが労働、そして生涯にわたる学習である。いずれも簡単なことではない代わりに得られる達成感も大きい。脳は20歳を過ぎると機能が低下していくが、学習による知識のアップデートによりその低下を緩やかにし、体力の衰えや環境の変化に対しても適応していくことができる。自分自身も、娘が成人を迎える60代や、その後孫の顔が見られるかもしれない70、80代に思いをはせれば、ストレスに適応できる健康的な長寿こそが本望だと思う。一生学ぶ、これは亡くなった父がよく言っていた言葉である。生涯現役、これを目標に精進したいと考える。