トップアスリートやシンガー・ソングライターらが相次いで闘病を公表した「白血病」-。血液のがんであるこの病気の発生率は、年々上昇しているといいます。その病因は不明のケースが多く、検査、治療も長期間に及びます。米国の血液内科マニュアルを独学で修得した、自称「さすらいの血液内科医」、東京品川病院血液内科副部長・若杉恵介氏(48)が「白血病を知ろう!」と題して、この病気をわかりやすく解説します。

  ◇   ◇   ◇

造血幹細胞移植というのが、正確な表現になります。幹細胞の採取方法や種類により、さらに細かく分類されますが、自分の骨髄を取り出してから使う「自家末梢(まっしょう)血幹細胞移植」、血縁者からの「末梢血幹細胞移植」、骨髄バンク登録者からの「骨髄移植」、「臍帯血(さいたいけつ)移植」の4つが主流です。

このうち自家末梢血幹細胞移植は、主に悪性リンパ腫や多発性骨髄腫で行われます。白血病の場合、自分の骨髄に白血病細胞が残っていることが多いので自家移植はあまり行われません。

移植するにはHLA抗原という「白血球の血液型」を合わせるのですが、赤血球の血液型と比べて非常に複雑で、他人と一致する確率は10万人に1人とされています。兄弟間の一致率は25%です。

理想的には血縁者間の骨髄移植が最もいいとされていますが、少子化と高齢化により、なかなか適合することは難しく、非血縁者間の移植が必要となっています。そのため骨髄バンクという仕組みが作られています。さきほどのHLA抗原を登録してもらい、移植が必要な方とHLA型が適合したら提供者(ドナー)となっていただく仕組みです。

登録者が多くなると、それだけ適合者が増えるのでいいことなのですが、適合者が多くなると選定や連絡などのコーディネートも多くなります。また、話を進めていても、途中で断念されるケースもあります。移植を待っている患者さんの状況も、刻一刻と変化します。バンクへは善意で登録していただくのですが、負担もあることを覚悟して、登録していただけると助かります。

臍帯血は赤ちゃんのへその緒の中の血液(幹細胞が多い)を採集して、凍結保存して貯蔵されています。HLAが1つ違っていても使えるとされています。凍結保存されているので、患者さんの治療のタイミングに合わせやすいという利点があります。しかしながら、造血機能の回復に時間がかかる点と細胞量の確保に難点があります。

造血幹細胞は、培養してもすぐに赤血球や白血球などになってしまい、幹細胞そのものの培養は難しかったのですが、最近、のりの成分で培養効率を上げられる報告がありました。開発が待たれます。

◆若杉恵介(わかすぎ・けいすけ)1971年(昭46)東京都生まれ。96年、東京医科大学医学部卒。病理診断学を研さん後、臨床医として同愛記念病院勤務。米国の血液内科マニュアルに準拠して白血病治療をほぼ独学で学ぶ。多摩北部医療センターなどを経て、18年から現職の東京品川病院血液内科副部長。自称「さすらいの血液内科医」。趣味は喫茶店巡りと読書。特技はデジタル機器収集。