歯周病は気象条件とリンクしている!? 岡山大学の研究グループが、歯周病患者2万人を調べた結果、歯周病は気圧や気温の変化があった「3日以内」に、急激に悪化することを突き止めた、と発表しました。

歯周病は、40歳以上の日本人の実に8割がかかっているといわれ、歯を失う原因の約4割を占めています。初期では、歯と歯ぐきの境目が赤く腫れたり、出血する(歯肉炎)だけですが、これがさらに進んで歯周炎になると、歯と歯ぐきの隙間が広がって歯周ポケットが深くなり、歯を支える組織が壊れて、歯がグラグラ動く状態になります。

歯周炎はその進み具合から軽度~重度の3段階に分けられますが、急激に悪化すると腫れがひどくなり、強い痛みを伴うこともあります。

岡山大大学院の森田学教授と竹内倫子講師のグループは、大学病院の歯科を受診している、安定した状態の歯周炎患者2万人を対象に、病状が急激に悪化したときの状況を調査しました。歯周炎が急性期症状を発症した症例のうち、原因が歯科関係に起因するとは考えにくいケースに注目。その結果、台風などの影響で気圧が大きく下がったり、気温が急に暖かくなるなどの「気象の変化」があった日の1~3日後に、歯周炎が急激に悪化して、ひどい痛みや腫れが起こりやすくなることが明らかになりました。

森田教授は「メカニズムは不明だが、気圧や気温の変化がホルモンの分泌や循環器系に影響した可能性がある」と話しています。

また、歯周病はなんと、心筋梗塞とリンクしていました。心筋梗塞になった人の死因となった血管の中から、歯周病菌が発見されたのです。でも、なぜ、口の中の細菌が心臓の血管に?

歯周病が悪化すると、歯周病菌の一部は、リンパ管を経て血管の中に侵入してしまいます。大部分は白血球に退治されますが、ごく一部の歯周病菌は白血球から逃れられる性質を持っており、それが血小板に入り込むのです。すると血小板は異常を起こし、固まりやすくなって容易に血栓を作ってしまいます。

長年歯周病を放置すると、この歯周病菌が侵入した血小板が体内で増加し、全身の血管をめぐり、動脈硬化が起こっていた場所に血栓となって次々と付着して血管を完全にふさぎ、心筋梗塞を引き起こすと考えられます。歯周病を、侮ってはいけません。

◆森田豊(もりた・ゆたか)1963年(昭38)6月18日、東京都生まれ。秋田大医学部、東大大学院医学系研究科修了。米ハーバード大専任講師を歴任。現役医師として活躍すると同時に、テレビ、ラジオでコメンテーターとして出演多数。テレビ朝日系の人気ドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」の医療監修をドラマ立ち上げの時から務め、今年10月に新シリーズを迎える。気分転換は週2回のヨガで、15年あまり継続。インスタグラムdoctormorita、ホームページmorita.proなどで情報発信中。