本紙で前回、男性の泌尿器科の病気を説明してくれた、日本大学医学部泌尿器科学系主任教授・高橋悟氏(59)が、「女性の頻尿・尿失禁」についてお話しします。日本女性の約2500万人もが、オシッコで困った経験を持っているというデータがあります。そのうち成人女性の約400万~500万人が尿失禁を経験、また頻尿に悩んでいる人も少なくありません。それでいて受診をためらう女性が多いことに、同氏は「我慢しないで相談して!」と診察を勧めています。

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頻尿の主な原因の1つに「間質性膀胱(ぼうこう)炎」があります。この症状としては、尿をためる膀胱に原因不明の炎症が起こり、トイレが近くなったり(頻尿)、トイレに行ってもすっきりしない(残尿感)、下腹部の痛みなどがあらわれます。

尿が膀胱にたまると、強い痛みが生じる特徴があり、排尿後には痛みは軽くなります。病気が進行すると、膀胱が萎縮して小さく硬くなり、尿をたくわえる蓄尿能力が下がってしまうのです。

通常の膀胱炎は細菌によるもののため抗生物質で治るのに比し、間質性膀胱炎には効果がありません。尿検査をしても異常が見られないことが多いため、膀胱がんなど、症状が似たほかの病気ではないことを確認すべく、内視鏡検査や尿細胞診などの検査を受けることが必要です。

間質性膀胱炎は、40歳以上の女性に多く見られますが、男性や若い人、子どもに発症することもあります。2015年に厚労省指定難病になり、病気が広く知られるようになり患者数も増えています。治療法には(1)水圧拡張術(2)薬物療法(3)膀胱内注入療法(4)膀胱拡大術・膀胱摘出術(5)膀胱訓練などがあります。

詳しくいうと、(1)は麻酔をして萎縮した膀胱を水圧で拡張する方法。外来でも治療可能。(2)は「抗うつ薬」「抗アレルギー剤」などを使用。(3)は抗凝固剤ヘパリンや局所麻酔薬の塩酸リドカインを膀胱内に注入して萎縮を防ぐ。通常は水圧拡張の補助的な治療として、1~4週間くらいの間隔で、外来で定期的に行う。(4)は外科的な最後の手段。他の治療法ではなかなか効果が上がらず症状が強いときに腸管を用いて膀胱を大きくしたり、あるいは膀胱そのものを摘出する。ただし、「術後も痛みが続いた」という報告もあり、手術には慎重な検討が必要。(5)はトイレに行きたいと思ったら、ほんの少し我慢してみて排尿の間隔を延ばしていく、という訓練です。

この症状は、慢性化するケースが多いため、気長に治療を続け、生活に支障のないところまで症状を抑え、改善していくことになります。