本紙で前回、男性の泌尿器科の病気を説明してくれた、日本大学医学部泌尿器科学系主任教授・高橋悟氏(59)が、「女性の頻尿・尿失禁」についてお話しします。日本女性の約2500万人もが、オシッコで困った経験を持っているというデータがあります。そのうち成人女性の約400万~500万人が尿失禁を経験、また頻尿に悩んでいる人も少なくありません。それでいて受診をためらう女性が多いことに、同氏は「我慢しないで相談して!」と診察を勧めています。

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多くの女性が悩まされている頻尿に「夜間頻尿」があります。夜間頻尿が疑われる人は、40歳の日本人の3人の1人、約2000万人といわれています。就寝後、排尿のため一晩に1回以上起きなければならず、日常生活に支障をきたす状態です。

主な原因に夜間の尿量が多くなる「夜間多尿」があります。夜間頻尿の約4分の3の人が夜間多尿で、つまり1日の尿量の3分の1、33%以上が就寝中に出ている計算です。

通常、昼間に比べて夜間の尿量は減るのですが、加齢により、夜間の尿量を減らす「抗利尿ホルモン」の分泌が低下したり、尿を濃縮する腎臓の機能が衰えたりすると夜間に作られる尿が増えてしまうのです。ほかに、日中の水分の過剰摂取、高血圧や心臓病の薬などによって起こることもあります。

また、夜間頻尿の大きな要因として、「足のむくみ」が挙げられます。どういうことか、というと-。昼間立ちっぱなしだったり、座ったままだったり、長時間同じ姿勢でいると重力により体の水分が下肢にたまりがちになります。この状態で夜、横になると足にたまった水分が静脈を通って上半身に戻っていきます。最終的には心臓に戻って来るのですが、このとき右心房にある水分の量を感知するセンサーが働くのです。すると、脳は余計な水分を排出するよう腎臓に指令を出します。この結果、就寝中にもかかわらず尿がたくさん作られ何度も尿意が起こる、というわけです。

足がむくみやすく、夜間の頻尿に悩んでいる人は、できるだけ同じ姿勢を避け、適度な運動、ふくらはぎのマッサージをして足の血行をよくするよう心がけましょう。デスクワークが多い人は、仕事の合間にストレッチなどを取り入れるのがいいでしょう。就寝の3時間ほど前に横になった姿勢で足を高くして、むくみをとっておくことも有効です。

夜間頻尿にはほかにも原因がありますので、それは次回にお話ししましょう。