本紙で前回、男性の泌尿器科の病気を説明してくれた、日本大学医学部泌尿器科学系主任教授・高橋悟氏(59)が、「女性の頻尿・尿失禁」についてお話しします。日本女性の約2500万人もが、オシッコで困った経験を持っているというデータがあります。そのうち成人女性の約400万~500万人が尿失禁を経験、また頻尿に悩んでいる人も少なくありません。それでいて受診をためらう女性が多いことに、同氏は「我慢しないで相談して!」と診察を勧めています。

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今回は「夜間頻尿」の原因で「夜間多尿」「足のむくみ」以外のものを取り上げます。まず、「機能的膀胱(ぼうこう)容量の減少」です。過活動膀胱(突然耐えがたい尿意に襲われるためトイレに行かずにはいられない)や間質性膀胱炎(尿がたまると痛みや不快感に襲われるので行かずにいられない)などで、膀胱にためることのできる尿量が少なくなったものです。少したまっただけで尿意を感じるため、夜間も頻繁に起きることになってしまうのです。

次に挙げられるのが、「睡眠障害」です。眠りが浅いとふとした拍子に目が覚め、トイレに行くことが多くなります。このような場合、起きたついでにトイレに行くだけなのに、本人は「トイレのために起きた」と勘違いしているのです。睡眠時無呼吸症候群により、夜間頻尿になることもあります。

また、多尿や機能的膀胱容量の減少は、「昼間頻尿」の原因にもなります。夜間頻尿は、このような原因がいくつか重なって起きることが多いものです。

なお、1日の尿量が基準を超える場合は多尿と考えられます。多尿の基準尿量は、1日当たり「体重(キロ)×40ミリリットル」で算出されます。つまり、体重60キロの人なら2400ミリリットル以上の排尿があれば、多尿となります。以前、お話ししたように、適切な1日の尿量は1000~2000ミリリットルです。

多尿の1番の原因は水分のとりすぎです。水分を大量にとれば、当然尿量も増えるからです。もう1つ、多尿の原因は、糖尿病、腎機能障害、尿崩(にょうほう)症などの病気によって引き起こされることもあります。尿崩症という病気は耳なじみがありませんが、何らかの原因で抗利尿ホルモンの分泌や作用が障害され、腎臓で水が再吸収されないなど、体内の水分調整がうまくいかず尿量が増える症状です。そのためのどの渇きを覚えることがあります。一般に抗利尿ホルモン製剤による治療が行われることになります。