本紙で前回、男性の泌尿器科の病気を説明してくれた、日本大学医学部泌尿器科学系主任教授・高橋悟氏(59)が、「女性の頻尿・尿失禁」についてお話しします。日本女性の約2500万人もが、オシッコで困った経験を持っているというデータがあります。そのうち成人女性の約400万~500万人が尿失禁を経験、また頻尿に悩んでいる人も少なくありません。それでいて受診をためらう女性が多いことに、同氏は「我慢しないで相談して!」と診察を勧めています。

 

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「尿失禁」を定義づけると、こうなります。「トイレ以外の場所で、しようと思っていないのに尿が出てしまい、生活するうえで困ったことが起きたり、衛生上でも問題になるもの」。

一口に尿失禁といっても、さまざまなタイプがあり、原因やもれ方によって次の4つに分けられます。(1)腹圧性尿失禁(2)切迫性尿失禁(3)溢流(いつりゅう)性尿失禁(4)機能性尿失禁です。

このうち最も多く見られるのが(1)と(2)です。その両方を持っている「混合型尿失禁」もあります。

それでは、腹圧性尿失禁から説明しましょう。女性には最もよく見られるもので、尿失禁の患者さんの約49%を占めています。何かの拍子におなかに力が入ると、もれてしまいます。ことに40歳以上の人、2回以上の出産経験のある人、太っている人は、起こしやすい傾向があります。

妊娠中や出産直後の人もこのタイプの尿もれを見ることがあります。妊娠中は胎児に膀胱(ぼうこう)や骨盤底が圧迫されるため、尿失禁が起こりやすくなります。しかし、出産してしまえば元に戻りますので、妊娠中の尿失禁は気に病むことはありません。

出産直後の尿失禁は、出産時に骨盤底の筋肉が傷むことで起こります。これも一時的なもので、産後3~4カ月ほどでたいていは自然に治ります。ただ、なかにはいつまでも治りきらずに尿もれが続いたり、年をとってから再発することもあります。

腹圧性尿失禁の場合、一番起こりやすいのは、せきやくしゃみをしたときです。大笑いしたときにちょっぴりもれるという人もいますし、スポーツをしたとき、重いものを持ち上げたときにも起こりがちです。最初はくしゃみをしたときにわずかにもれる程度だったとしても、進行すると、「ただ歩く」とか「階段の上り下りをする」という日常の動作でも、もれるようになります。もれる頻度も増えて尿もれパッドが手放せなくなることもあります。

このタイプは、骨盤底を体操によって引き締める「骨盤底筋体操」(後述します)や手術療法で治療を行えば、完治も可能です。あきらめないで受診してください。