本紙で前回、男性の泌尿器科の病気を説明してくれた、日本大学医学部泌尿器科学系主任教授・高橋悟氏(59)が、「女性の頻尿・尿失禁」についてお話しします。日本女性の約2500万人もが、オシッコで困った経験を持っているというデータがあります。そのうち成人女性の約400万~500万人が尿失禁を経験、また頻尿に悩んでいる人も少なくありません。それでいて受診をためらう女性が多いことに、同氏は「我慢しないで相談して!」と診察を勧めています。

◇    ◇    ◇

今回から「頻尿」や「切迫性尿失禁」の治療法をお話しします。これらは脳や脊髄の障害、膀胱(ぼうこう)や尿道の病気、原因不明の過活動膀胱などによって起こりますが、原因が何であれ、治療法は原則的に同じです。背景にある過活動膀胱を改善しなければなりません。生活スタイルの見直し、膀胱訓練や骨盤底筋体操などの「行動療法」や「薬物療法」を組み合わせ治癒を目指します。

まず、「飲水コントロール」といって、水分の摂取量を見直し、適切な量をとるよう調節します。頻尿や尿失禁がある人が水分をとりすぎると、症状が悪化します。一般には1日に必要な水分摂取量は、「朝昼晩の3度の食事+水やお茶などを1000ミリリットル程度」です。それをチェックするには、以前にお話しした「排尿日誌」をつけてみるといいでしょう。ただ、もれないようにしようと、水分の摂取量を減らしすぎるのは考えものです。夏は熱中症になったり、腎臓機能の低下を招いたり、尿路感染症を引き起こすこともあります。1日の排尿量が800ミリリットル未満のときは水分の摂取量を増やしたほうがいいでしょう。

次の「膀胱訓練」ですが、トイレに行くのを我慢して膀胱に尿をたくさんためられるように訓練することです。頻尿や切迫性尿失禁では、強い尿意に襲われても実際に膀胱がいっぱいになっているわけではありません。もれるのを心配して早め早めにトイレに行く癖がついているため、知らないうちに膀胱が知覚過敏になり、少しの尿に過剰に反応してしまうのです。そこでトイレに行きたくなってもちょっと我慢し、排尿の間隔を空けられるように訓練します。

元々私たちの体は初めに尿意を感じてから、しばらく我慢できる仕組みになっています。トイレに行きたくなっても尿道をギュッと締めて我慢するうちに、膀胱の緊張が緩み、尿意の波がひいていきます。

初めは1日数回、5分ほど我慢します。1週間続けて成功したら、10分、15分と徐々に我慢する時間を延ばしていくのです。排尿間隔が2~3時間になり、1回の排尿量が200~400ミリリットルになったら、目標達成! です。また、腹圧性尿失禁同様に骨盤底筋体操も有効です。尿道括約筋を鍛えることは、過活動膀胱や頻尿、切迫性尿失禁の改善に役立ちます。膀胱訓練と併せて日課にしましょう。