本紙で前回、男性の泌尿器科の病気を説明してくれた、日本大学医学部泌尿器科学系主任教授・高橋悟氏(59)が、「女性の頻尿・尿失禁」についてお話しします。日本女性の約2500万人もが、オシッコで困った経験を持っているというデータがあります。そのうち成人女性の約400万~500万人が尿失禁を経験、また頻尿に悩んでいる人も少なくありません。それでいて受診をためらう女性が多いことに、同氏は「我慢しないで相談して!」と診察を勧めています。

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今回は、機能性尿失禁の治療法についてお話しします。この症状は尿路や排尿機能には問題はないものの、運動機能や精神機能の障害によってトイレ以外の場所で失禁してしまいます。このため治療というよりはきちんとトイレでできるような工夫をしたり、環境を整えることが大切になります。治療は難しいですが、超高齢社会の日本においては、最も困る尿失禁といえます。

脳卒中の後遺症などで体にまひが残った場合、リハビリに励むかたわら、誰かに手助けしてもらい、「3時間おきに」というふうに時間を決めて排尿するようにすると失禁を防げます。その際に、排尿にかかわる動作の中で何がうまくいかないのかをよく見極め、リハビリや妨げになっていることを取り除くように努める必要があります。

たとえば、廊下が歩きにくい場合は手すりを設ける、トイレのドアが開けにくいときはノブを変える、履物はスリッパではなくマットにするなど、住環境を整備します。夜間、トイレまで行くのが難しいときは尿器やポータブルトイレを利用するのもいいでしょう。

尿もれパッドや紙おむつも有効ですが、頼りすぎると排尿の自立ができなくなるのであくまで補助するものと考えましょう。

認知症などで精神機能に障害が起きている場合は、介護者は排尿のサインを見落とさないようにし、それらしいそぶりが見えたらトイレに誘導します。また、トイレと間違えて部屋や風呂場でしてしまうことがあるので、どこがトイレか、わかりやすく表示しましょう。着脱の楽な服装にして、排尿の動作や便器の使い方、ふき方などを見守り、できていない部分があればフォローします。さらには先述の排尿日誌などで排尿パターンを観察し、本人が尿意を示さなくても出そうな時間になったら、トイレに連れて行くなど、規則正しい排尿習慣をつけることが、尿失禁を防ぐ方法になります。