北里大学北里研究所病院糖尿病センター長の山田悟氏が、「ウィズコロナ時代」のロカボ(緩やかな糖質制限)について解説します。ロカボの語源は「Low(低い) Carbohydrate(炭水化物などの糖質)」。新型コロナウイルスとの共生で新しい生活様式が求められる中、食事に気を付けながら、毎日楽しく食べて健康になりましょうと、勧めています。

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高血糖にさらされると、糖化反応が起こります。糖化反応とは、糖が体内のタンパク質に結びついて、タンパク質の機能をおかしくしたり、細胞を老化させたりする現象です。

骨は鉄筋コンクリートに例えられ、カルシウムがコンクリートで、中で束になって鉄筋の役割を果たしているのがタンパク質のコラーゲンなのですが、このコラーゲンが糖化反応を起こすと、もろくなって非常に骨折しやすくなることが知られています。要介護や寝たきりのリスクを高めるロコモ(ロコモティブシンドローム=運動器症候群)の一因である骨粗しょう症です。

皮膚の真皮のコラーゲンが糖化反応を起こすと、しなやかさが失われます。弾力がなくなって、しわやたるみをつくります。黄ぐすみにもかかわっているという見方もあります。肌の培養細胞に糖化反応産物を添加すると、色素沈着の領域が大きくなったという研究結果があるのです。

老化を促進する糖化反応は、骨や皮膚だけでなく、全身にさまざまな病気を引き起こします。血管では動脈硬化症、目では白内障、アルツハイマー病も糖化によってできた最終糖化産物(AGEs)の蓄積との関連が指摘されています。急激な血糖上昇を抑え、高血糖を改善するロカボ(ゆるやかな糖質制限)は、糖化反応を避ける上でも有用です。

動脈硬化による血管障がいに起因しない糖尿病による心臓の不調を表す言葉に、「糖尿病性心筋症」があります。米国糖尿病学会の学会誌に最終糖化産物の蓄積によるものではないかという論文が掲載されました。現在、「心不全パンデミック」と呼ばれる高齢の心不全患者の大幅な増加が問題になっています。その一部に糖化反応がかかわっているのではないかと指摘する声が上がっています。