北里大学北里研究所病院糖尿病センター長の山田悟氏が、「ウィズコロナ時代」のロカボ(緩やかな糖質制限)について解説します。ロカボの語源は「Low(低い) Carbohydrate(炭水化物などの糖質)」。新型コロナウイルスとの共生で新しい生活様式が求められる中、食事に気を付けながら、毎日楽しく食べて健康になりましょうと、勧めています。

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サッカー日本代表の長友佑都選手(33)は2017年から食事法を変え、アスリートを対象とした糖質制限「ファットアダプト」を実践しています。

アスリートの世界では、試合、レースの数日前から糖質を積極的に摂取して、筋肉内にグリコーゲンを蓄える「カーボローディング」が、昔から行われていました。インスリン分泌能力の高い欧米人なら問題はないのかもしれませんが、分泌能力が低い日本人は食後に高血糖が起こりやすく、その後に血糖値が急激に下降する血糖値スパイクが生じます。そして血糖値の乱高下はパフォーマンスに影響します。

長友選手はプロのアスリートとして模索する中で、血糖値が乱高下するとパフォーマンスが悪くなることに気付いていました。最初は糖質をほとんど取らない極端な糖質制限を試したそうです。しかし、激しいトレーニングをすると体重が落ち、試合ではスタミナ切れが起こる。ちょうどその頃に私と知り合い、アスリートとして必要なエネルギーをもう少し取れるように、どのくらい糖質を取ると、血糖値がどのくらい上がるか、測定器をつけ、毎食後、計測するようにしました。その結果、長友選手の場合、1食60グラムまでなら食後血糖値を140mg/dlの正常範囲に抑えられることが分かりました。

長友選手が実践している「ファットアダプト」は、血糖値の乱高下を抑えるため、糖質は1食60グラム。タンパク質、脂質は積極的に取り、脂質を効率的に燃やしてエネルギー源にする食事法です。ロカボ(ゆるやかな糖質制限)は1食20~40グラムですから、ロカボの範囲は超えていますが、プロアスリートでありながら、日本人の平均(1食90~100)よりずっと少ない摂取量です。

「ファットアダプト」とは、脂質(ファット)をエネルギー源とするよう体を適応させる(アダプト)という意味です。