感染症に詳しい、河北総合病院(東京)血液内科副部長の若杉恵介氏(48)に、コロナ禍のこれまでを振り返ってもらった。同氏は、日本での感染が初確認された1月から「PCR検査」依存への問題、「院内感染」対策の盲点を指摘していました。

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年明けからの「H3N2」のA型への対応策を考えていたときにインターネットニュースに、「中国にて毒性の強い肺炎の発生-」が流れました。三国志マニアにはなじみのある湖北省武漢市で集団感染を起こしているとのことで、海鮮市場が原因かもしれないと出て来ました。

ただし、謎のウイルスです。「百度」という中国の検索サイトを使って中国版ツイッターの「ウェイボー」でのトレンドを調べました。湖北省の武漢という位置から、嫌な予感がしていました。中国語なので手間取りましたが、予想通りあるキーワードが重点的にヒットしました。「冠状病源」です。中国語で「コロナウイルス」です。詳しくはわかりませんでしたが、やはり呼吸器症状・肺炎を起こし、重症みたいです。

「これはSARSかもしれない」。SARSとは「重症急性呼吸器症候群」で、2002~03年に広東省で引き起こされたコロナウイルスによる感染症のことです。ウイルス学的には「SARS-CoV」と呼びます。翌々日のニュースで、中国当局が「新型コロナウイルスであって、SARSコロナウイルスではない」という発表を行いました。いずれにしてもこれは厄介なことです。

ただし海を隔てた異国で起きていることで、目の前にはまだインフルエンザの患者さんが、わんさかいる状況です。

マスク、特にN95規格と呼ばれるものや、防護服の確保に乗り出しますが、N95マスクは一気に問屋から姿を消し、防護服は2014年のエボラ出血熱が「日本に来るかもしれない」と騒動になり、病院の財政を逼迫(ひっぱく)するほど高騰した経緯があり(しかも使われず)、なかなか購入に踏み切れません。感染対策に対する費用は診療報酬上は感染防止対策加算にて対応されますが、基本的に単年度予算で、用具高騰に対応できるような金額ではないのです。いいものを買いたいのですが、どうしても安価で入手が容易なものに頼らざるを得ません。費用対効果の検討が重要なのです。

個人的な分として、N95マスクはネット通販で40個ほど入手できましたが。