感染症に詳しい、河北総合病院(東京)血液内科副部長の若杉恵介氏(48)に、コロナ禍のこれまでを振り返ってもらった。同氏は、日本での感染が初確認された1月から「PCR検査」依存への問題、「院内感染」対策の盲点を指摘していました。

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今回のウイルスは「新型コロナウイルス」と呼ばれましたが、WHO(世界保健機関)はすぐに暫定的に「nCoV19」(2019年に見つかったnew Corona Virusの意)と名付けました。その後さらにWHOは、今回のウイルスによって引き起こされる疾患を「COVID-19」(COronaVIrusDisease2019の意)と呼ぶことに決めました。何だか、イベントみたいなネーミングで軽い感じがしますね。WHOも、それを狙ったとの見方があります。

国際ウイルス学会は、今回のウイルスを「SARS-CoV2」と呼ぶことに決めました。ウイルス的に「SARS-CoV」に近いという理由です。

文献では「nCoV19」「COVID-19」「SARS-CoV2」という3つの名前の情報が飛び交いました。心なしか欧米が「SARS-CoV2」を使い、中国などアジア諸国は「COVID-19」を使う傾向があります。私はウイルス学会的に「SARS-CoV2」と呼んでいますが、日本の学会はなぜか「COVID-19」が主流のようです。

一部では「SARS2」という呼び名も検討されたのですが、どうもかつてのSARS(重症急性呼吸器症候群)はイメージがとても悪いということで「COVID-19」となったようです。このあたり、「政治力」を感じさせる話が多く、それがWHOのあり方に諸国が反発してしまった理由のようです。

「武漢型」とか「中国ウイルス」などと呼ぶ話もありましたが、挑発的行為の次元です。誰も病気に名前をつけられて気持ちの良いはずはありません。なかには「東京型」という自虐的な“ネーミング話”もありました。

でも、かつて新型インフルエンザが「H1N12009pdm」に落ち着くまでに、「豚インフルエンザ」とか「メキシコ・インフルエンザ」などと呼ばれる紆余(うよ)曲折もありました。それに今まで「スペイン風邪」とか「Aソ連型」「A香港型」など、配慮のない呼び方がされていたので、今回の「COVID-19」の呼称はいいかもしれません。ちなみに中国の人に「A香港型」と言っても通じませんでした。彼らはインフルエンザのA型を「甲型」、B型を「乙型」と呼ぶそうです。