世界的な感染拡大が続く新型コロナウイルス。未曽有のパンデミックに緊急事態宣言も発令され、社会のあり方が大きく変化している。他者とのコミュニケーションのあり方も大きく変化し、終息も見通せない重圧が続く。メンタルヘルスへの影響も懸念される中、「コロナうつ」との言葉も生まれた。長期化する「新たな生活様式」の中での「心」の問題とは。市ヶ谷ひもろぎクリニックの渡部芳徳理事長に聞いた。

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コロナ禍の今、自殺者が増えています。2020年の自殺者は前年と比べて男性は135人減少しましたが、女性は885人増えました。これは、女性の方がはるかに深刻な状況にあるということです。非正規社員が女性の方が圧倒的に多い、などがあると思います。ただ、自殺者が増えている原因が「コロナうつ」とはわかっていませんが、経済的な打撃や家庭内ストレスに加えて、おそらくコロナうつが大きく関係していると推察しています。

特に、今はコロナの第3波。コロナの第1波はしっかり乗り切り、希望が見えてきていたのに第2波に。それが収まらずにGo Toトラベルなどは中止になり、今、最もつらい状況にあるのです。

そのつらい精神状態にあるときに、精神科や心療内科をすぐに受診されると良いのですが、実は、コロナうつを訴えて受診する方は極めて少ないのです。

絶望的な気持ちになったときは、1人で抱え込まないでください。我慢を重ねると自殺に至ってしまいかねません。早い段階で、精神科を受診して、相談してほしい。受診すれば、精神科医は、「お金がないなら生活保護をどうするか」「自立支援をどうするか」など、そういう対応をしてくれるところに紹介します。精神科の敷居は、自分勝手に決して高くしてはいけません。自分がこんなにも追い込まれて大変なときに、“助けてほしい”と誰かに言うことが、この状況を打開する第1歩になることを知ってください。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)