「コロナうつ」は、若者やリモートワークを行っている人々のこと、と思っている人もいるかもしれません。しかし、「新型コロナに感染するのが怖いから外出したくない」と不安になるのは高齢者も同じ。ただ、高齢者の場合はコロナうつのリスクのみならず、「フレイル」のリスクも高くなります。フレイルは加齢に伴い筋力が衰え、健康な状態から要介護に移行する中間の状態です。

フレイルには3つの側面があり、身体的問題に限らず、認知機能障がいやうつなどの精神的問題、1人暮らしなどの社会的問題も含まれています。身体的問題だけだとロコモティブシンドローム(ロコモ)です。高齢者のうつ病とフレイルには似かよった点がありますが、精神的評価を丁寧に行えば鑑別は難しくありません。強い抑うつ気分、焦燥感、身体的症状などがあればうつ病の可能性があるので、周囲の人が早く精神科を受診するように勧めましょう。うつ病には薬物療法が効きますが、フレイルにそれを使うと逆に悪化させる可能性もあります。

うつ病・フレイルの予防に有効なのは、基本は「運動」と「食事」。(1)カルシウムの摂取に加え、タンパク質、ビタミンD、Kをしっかり摂取。これで骨粗しょう症を防ぐことができます。(2)日光浴。これは皮膚で紫外線によってビタミンDが作られるからです。(3)ウオーキングにも工夫が必要。単に8000歩歩けば良いというのではなく、15分歩くなら、そのうちの5分を速歩にする。エレベーターは使わずに階段にする。このように負荷をかけると筋力は保たれます。(4)運動のやり過ぎ&ケガに注意。基礎的な体力をつけて徐々にステップアップするように。

精神的な面は、地域のボランティアなどに貢献すると人とのかかわりを保つことができ、精神的な支えになります。同居家族がいる場合は、家族とのコミュニケーションが一番。そのためには、家族はしっかりコロナ感染予防を徹底すべきです。

(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)