私たちがエネルギー活動のために酸素を利用すると、体内で活性酸素が生じます。感染防御機能や神経伝達物質として働くため、活性酸素自体は生きていくために必要不可欠なものですが、過剰に発生すると、老化やがんをはじめ、糖尿病や動脈硬化といったあらゆる生活習慣病の原因になります。

体内で増えた活性酸素を無毒化する抗酸化酵素は20歳代をピークに減少するため、他の手段で抗酸化物質を体の外から補う必要が出てきます。抗酸化物質とは酸化されやすい物質のことで、活性酸素により私たちの体が酸化されるよりも前に、自らが酸化することで体を守ってくれる作用を持ちます。

代表的なものには、ビタミン(A、C、E、葉酸、コエンザイムQ10など)やミネラル(亜鉛、銅、マンガン、セレンなど)、植物由来のファイトケミカル(ポリフェノール、カロテノイドなど)があります。こうした抗酸化物質が含まれた食品を意識的に摂取する習慣が、からだを病気から遠ざける秘訣(ひけつ)と言えます。

加齢やストレス、過度な運動や喫煙などでも余分な活性酸素を消去するバランスが乱れます。歯を失う原因としてトップに挙げられる歯周病は、歯周病菌の存在以外にも宿主側の免疫機能などさまざまな要因が複雑に絡み合っています。

2013年(平25)に発表された新潟大学の論文では、抗酸化物質を含む食品を多く摂取している人は歯周病の進行が遅かったという結果が示されています。また、徳島大学の報告によると、歯周病進行群に酸化ストレス度が強く関連していたとも記されています。口の中のケアをしっかり行うと同時に、酸化ストレスを制御すること、すなわち食事指導を中心とした生活習慣の改善も歯科では重要な位置づけになっています。

◆照山裕子(てるやま・ゆうこ)日本大学歯学部卒。同大学大学院歯学研究科を経て東京医科歯科大学歯学部付属病院勤務。テレビやラジオでのわかりやすい解説が評判となり、雑誌のコラムや日刊スポーツでの連載を担当。文筆家としての活動も積極的に行う。現在は東京医科歯科大学非常勤講師、日本アンチエイジング歯科学会理事、複数の歯科クリニックで診療。