口腔(こうくう)粘膜にできる病気の発見につながるのは、普段から自分の口の中を観察し、いち早く変化に気づくという心がけです。男性であればひげ剃りの際、女性であればお化粧をするついでに口の中をのぞくことから始めてみてください。

そして、最低でも月に1度は隅々まで観察する時間を設けると安心です。衛生面の観点から歯ブラシは1カ月ごとに新しいものに替えるのが理想的で、私が担当する患者さんには毎月1日を交換の日と決めてもらっています。同時に口腔粘膜のセルフチェックも促しているので、今日はその具体的な手順を紹介します。

まず、明るい場所で大きな鏡を用意してください。取り外し式の義歯(入れ歯)や矯正装置などは外しましょう。

<1>にっこりと口角を上げて上下の前歯の歯ぐきを見る

<2>唇をめくって裏側を見る

<3>左右のほおを引っ張り、ほおの粘膜を見る

<4>顎を引き、下顎の内側の歯ぐきを見る

<5>上向きになり、上顎全体と歯ぐきを見る

<6>上顎の後方を指で軽く触り、膨らみなどがないか確認

<7>舌の表面と側面をチェックした後に舌を持ち上げて裏側と口腔底を見る

以上の順番で行ってください。軟らかい部分に硬いしこりがある、つるんとしている歯ぐきの表面が粗造(そぞう)になっているといった具合に、いつもと真逆の状態は何らかのサインです。

特に口腔がんの好発部位である舌は頻繁にみていただきたいポイントです。奥が見えづらい場合は、ガーゼや水に溶けないティッシュを指に巻き、舌をはさんで持ち上げてみてください。舌についた汚れが口臭や誤嚥(ごえん)性肺炎等の原因になることは、以前も触れていますが、健康的な色を保っているかを確認するだけでも疾病予防につながります。国民的マスコット「ペコちゃんのポーズ」が合言葉です。