【誤嚥を防ぐ食べ方の基本】

誤嚥(ごえん)を防ぐためには、食べ方にもコツがあります。

<1>ひと口は少なめに、大口で食べない

<2>椅子に深く腰掛け、背筋を伸ばしてやや前傾姿勢で食べる

<3>軽く下を向き「ごっくん」とうなずきながらのみ込む

<4>テレビやスマホを見ながらの「ながら食い」は避ける

<5>早食いは禁止

<6>汁物や飲み物は上を向いて飲まない(ビールなど特に注意)

一度習慣化してしまえば簡単です。家族に高齢者がいる場合は、食事の形態にも留意して調理してください。むせやすくのどを詰まらせる危険がある食事の特徴として、パサパサ(カステラ、いも、ゆで卵など)サラサラ(みそ汁、お茶など)ベタベタ(餅、焼きのりなど)ボロボロ(そぼろ、チャーハンなど)モチモチ(こんにゃく、かまぼこなど)といった表現が当てはまります。

かんきつ類を使った酸味が強いメニューや酢の物はむせやすいですし、豆やナッツ類といった粒が残る食材にも注意しましょう。

適度なとろみがあり、やわらかく変形しながらのどを通過するものは比較的食べやすいため、中華料理には理想的なメニューが多いと言えますが、とろみは高温になりがちなので出来たては危険です。

近くにむせた人がいた場合、上半身を前方に倒しましょう。気管を水平にし、せきをさせながら詰まった食べ物を吐き出させてください。

歯科では、咀嚼(そしゃく=かみ砕く)や嚥下(えんげ=のみ込み)といった食事にまつわる口の機能を評価するシステムが構築されています。しっかりかまなくても容易に食べられるメニューが増えたこともあり、近年では小さい子どもの口腔(こうくう)機能低下も問題視されています。口を正しく使えないと、歯列だけでなく顎や顔面の成長発育にも影響が及びます。生涯にわたり健康に生きる秘訣(ひけつ)が口にあることは、こうした側面からも明らかです。

◆照山裕子(てるやま・ゆうこ)日本大学歯学部卒。同大学大学院歯学研究科を経て東京医科歯科大学歯学部付属病院勤務。テレビやラジオでのわかりやすい解説が評判となり、雑誌のコラムや日刊スポーツでの連載を担当。文筆家としての活動も積極的に行う。現在は東京医科歯科大学非常勤講師、日本アンチエイジング歯科学会理事、複数の歯科クリニックで診療。