新型コロナウイルス感染症が出現した昨年から、日常の衛生習慣の徹底が感染予防策の要になりました。その流れから、ドラッグストアやコンビニなどに並ぶオーラルケアグッズを買い求める人の割合も増加傾向にあるようです。

日本歯磨工業会が今年の2月に発表した2020年度の出荷データによると、液体歯磨きと洗口液といった液状製品は前年度に比べて数量で13・1%、金額で9・7%上昇したとされています。

患者指導の一環として、セルフケアで使用しているアイテムを患者さんに持参していただくことがありますが、液状製品を用法通りに使用できていないケースは案外多いものです。

「洗口液」と書いてある製品は歯ブラシを使用せず、適量を口に含んですすぐことにより口臭予防や口内浄化を目的としています。薬用成分によって、口の中に浮遊する細菌を殺菌する効果が期待でき、歯磨きができない環境下でも使用できる点が長所といえます。

一方で「液体歯磨き(あるいは液体ハミガキ)」と書いてあるものは、適量を口に含んでブラッシングをする、あるいは吐き出した後にブラッシングをすることが求められます。つまり、一般的な練り歯磨き(ペースト状の歯磨き粉)と使い方は同じです。

ブラッシングの併用が前提のため、洗口液にはない「歯を白くする」という効能も記載が可能であるせいか、「ゆすぐだけで歯が白くなる」と勘違いして購入される方もいるようです。液体歯磨きはすみずみまで素早く浸透するので時短にもなりますが、使用感がなめらかなので、じっくり丁寧に磨きたい場合にも適しています。練り歯磨きとの大きな違いは研磨剤(歯の表面の汚れを落とす成分)の有無です。

普段使いは液体歯磨き、着色が気になる時は練り歯磨き、といった具合に使い分けるのも良いでしょう。

◆照山裕子(てるやま・ゆうこ)日本大学歯学部卒。同大学大学院歯学研究科を経て東京医科歯科大学歯学部付属病院勤務。テレビやラジオでのわかりやすい解説が評判となり、雑誌のコラムや日刊スポーツでの連載を担当。文筆家としての活動も積極的に行う。現在は東京医科歯科大学非常勤講師、日本アンチエイジング歯科学会理事、複数の歯科クリニックで診療。