精神栄養学が解きほぐす、こころと食事の関係。帝京大学医学部精神神経科学講座の功刀浩主任教授はこう話す。

「トリプトファンが血液中から脳へと取り込まれる際に、いくつかのタンパク質と結合する必要があります。これらを“輸送タンパク質”といい、その働きを邪魔するものも片方では存在します」

トリプトファンとは体にはなくてはならない必須アミノ酸のひとつだ。

「トリプトファンが脳内へ運ばれるために同じ種類であるアミノ酸である必要があるのです。しかし別のアミノ酸が多いとトリプトファンが輸送タンパク質に結合しにくくなり脳に入る量が減ってしまいます。昔から甘いものを食べると脳内のセロトニンが増えることはよく知られていて、それは輸送タンパク質に結合しやすくなることで、トリプトファンが脳に多く運ばれるからなのです」

実際、トリプトファンが含まれていない食事をとっていると気分の落ち込みなどのうつ状態になりやすいという報告がある一方、トリプトファンは肝臓でキヌレニンという物質に代謝され体内に炎症が起きることでキヌレニンへの代謝ルートが促進されるという説もある。いずれにせよトリプトファンを上手に取り入れることは大事なカギのひとつのようだ。

トリプトファンは、食事をきちんととっていれば不足する心配はないものの、気になる人は牛乳、肉、魚、ナッツ、納豆、卵、バナナなどから摂取しよう。