日本で、新型コロナウイルスの感染が初めて確認されたのは、2020年1月15日。それから第1波、2波、……そして、今は第5波が収束した段階。国内の12月7日時点での感染者数は172万7983人、死者は1万8367人というのが現状です。

そのため、外出がなかなかままならず、仕事もリモートワークと生活は大きく変わりました。その変化は、外科の手術にも出てきています。

従来であれば、手術適応であっても、コロナ禍では「病気の性質や緊急度」、加えて「地域の感染状況を考慮」して、手術を行うか延期するかの判断が必要になりました。

日本胸部外科学会では、実際に新型コロナの感染が胸部外科手術にどの程度影響があったのかについてアンケートを行いました。その結果を呼吸器外科領域でみますと、20年4月以降は、手術が減少した施設が50~60%もあったことがわかりました。

では、手術が減少した原因はどこにあるのか--。それにはいくつか考えられます。「検診受診者の減少」「外来受診が控えられた」「検査が延期された」「初診患者数が減少した」などです。しかし、このようなことで病気発見のタイミングを逃すと、早期で発見されるはずであった肺がんが、進行した段階で見つかることにもなります。コロナ禍とあっても、そこは決して甘く考えてはいけません。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)

 

◆池田徳彦(いけだ・のりひこ)主任教授 東京医科大学呼吸器外科・甲状腺外科主任教授。1960年(昭35)生まれ。86年東京医科大学卒業。93~94年カナダ・ブリティッシュコロンビア大学へ留学。2002年東京医科大学講師、05年国際医療福祉大学三田病院呼吸器外科教授を経て08年より現職。専門は呼吸器外科(肺がんの集学的治療・肺がんの早期診断)。