肺がんの早期発見には「がん検診」では「胸部エックス線検査」「人間ドック」では希望者に「胸部CT検査」が行われます。それらの検査で、肺に影があれば、がんの疑いがあります。ただ、胸部エックス線や胸部CTで発見されるのは、肺のどこにどれくらいの大きさで、どのような形で影が存在するか、ということです。

その影の写り方で肺がんが疑われる場合は、次の「気管支鏡検査」に進みます。この検査に使われる気管支鏡は直径4ミリくらいのカメラのついた管でできていて、それを口や鼻から影の近くまで挿入します。

そこで、モニターを見ながら気管支鏡の管の先から器具を出して、影の部分の組織を一部サンプルとして取り出します。それを顕微鏡検査に回すと病理医が顕微鏡で調べ、がんか否かを診断します。がん組織が検出されると「肺がん」と診断がつきます。

ただ、すべての検査がこのようにスムーズに診断がつくわけではありません。これで終了といかないケースもあります。気管支鏡で採取した組織からでは、その影が何なのかがわからないケースもあるのです。3センチくらいの影であれば、ほぼ100%診断がつきます。それが1センチの影の場合は、診断率は低くなります。

診断はつかないが、画像からは肺がんが強く疑われ、その疑いが消えない場合は、最終検査として「胸腔(きょうくう)鏡検査」を行います。その胸腔鏡検査とは--。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)

 

◆池田徳彦(いけだ・のりひこ)主任教授 東京医科大学呼吸器外科・甲状腺外科主任教授。1960年(昭35)生まれ。86年東京医科大学卒業。93~94年カナダ・ブリティッシュコロンビア大学へ留学。2002年東京医科大学講師、05年国際医療福祉大学三田病院呼吸器外科教授を経て08年より現職。専門は呼吸器外科(肺がんの集学的治療・肺がんの早期診断)。