肺がんの85%を占める非小細胞がんの治療は「手術」「放射線治療」「薬物治療」が3本柱。肺がんの進行状況で、治療が手術と決まった場合、基本となる手術は「肺葉切除術」になります。

肺は右肺が3つ、左肺が2つのブロックに分かれていて、それを「肺葉(はいよう)」と言います。右肺は上葉、中葉、下葉の3葉、左肺は上葉、下葉の2葉に分かれます。左肺は心臓がある関係で2葉なのです。

肺がんの手術は、この葉を単位として取るのが基本。右の上葉にがんがある場合は、右の上葉を切除します。がんができている一葉をすべて切除するのです。もちろん、がん細胞が転移している可能性のある周辺のリンパ節も同時に切除します。日本の肺がん手術では、7割がこの肺葉切除術で行われています。

そして、さらに大きく切除するのが「肺全摘術」です。肺の中心部の太い気管支や血管ががんによって浸潤されている場合などは、肺をすべて取り除かないとがんが取り切れないので、肺全摘術での対応となります。

肺全摘術は、片方の肺をすべて切除するので、呼吸機能がそれだけ多く失われます。肺と心臓は二人三脚なので、肺が片方なくなると心臓への負担も大きくなります。だから、この手術でしかがんを取ることができない患者さんが対象になります。しかし、条件はそれだけではありません。肺全摘術は体力的に元気な患者さんにしか行うことはできないので、条件を満たす患者さんは極めて少なくなります。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)