肺がんの手術方法は「胸腔(きょうくう)鏡手術」と「開胸手術」とが行われています。前回は胸腔鏡手術を紹介しましたので、今回は開胸手術を紹介します。

開胸手術は胸の脇の部分、肋骨(ろっこつ)と肋骨の間を切開して行う手術です。この時に切開する大きさは8~10センチ。胸腔鏡では最大で3~4センチ程度なので、それと比較するとかなり広く切開します。ただ、胸腔鏡を併用することが多いので、その前の時代の開胸手術と比べると、かなり小さい切開になりました。

すなわち胸を2~3センチ程度切開し、この傷口からは胸腔鏡を挿入します。その胸腔鏡で写し出される胸腔内を、拡大されたモニターで見るとともに、8~10センチの開胸部から直視下で実際に中を見ながら手術を行います。

一方で、開胸手術は進行がんに行われます。進行がんでは、太い血管にがんが食い込んでいるようなケースがあります。そんな時には、血管を切断したりつなぎ合わせたりといった操作が必要になります。

そのような繊細で複雑な操作が必要な特別な手術では、大きく切開した開胸手術で行うことが多いのです。手術を安全に行う、これが第一。それには、この段階であれば開胸手術が最善の選択なのです。

胸腔鏡手術は傷が小さいから良い、開胸手術は傷が大きいからダメ、などということはありません。開胸手術には開胸手術の適応があるのです。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)