肺がんの中の小細胞がんは進行が速く、早期発見が極めて難しい。そのため、根治を目指す手術ができるケースは、極めて少ないのが現状です。

健康診断で偶然に1センチ程度の小細胞がんが発見され、いろいろ手配をして私たちの初診にたどりついても、すでに2~3センチに大きくなっていることが多いのです。増殖が極めて速い。がんが2~3センチ程度でそこだけにとどまっていると手術はできます。

しかし、小細胞がんは2~3センチであってもすでに肺の中のリンパ節に転移していることが多い。それだと手術単独では成績が悪いのです。

それでも、実際に手術で治したケースはあります。小細胞がんでは1~2センチのがんで手術をしたとしても、術後に抗がん剤を行うことがほとんどです。しかし、これで治ったわけではありません。がんは5年経過しないと「治りましたよ」とは言えません。

進行の速い小細胞がんは、再発する場合も速い。治療後半年、あるいは1年以内で再発することが多いのです。だから、治療後2年くらいたつと患者さんに「治っている可能性が高くなってきました」と言ってあげられます。

そして、3年、4年、5年…ここまでくると、「再発の可能性は少ないということでよろしいと思います」と言います。再発率が高い病気なので、患者さんはこわごわ生活されてきました。だから、心から喜ばれます。そんな患者さんを診ていると私たちもうれしいです。できれば、患者さん全員がそうであってほしいのですが…。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)