肺がんの中の約15%を占める小細胞がんは進行が速いので、対応が難しいがんの代表です。
それでも、がんが片方の肺にとどまっているか、同じ側のリンパ節にとどまっている「限局型」であれば、「化学療法」と「放射線治療」で対応できます。
この治療で“小細胞がんがほぼ消失した”と判断された患者さんには、再発を抑えるための「予防的全脳照射」を行います。
予防的全脳照射とは、脳全体に放射線を照射して再発を防ぐ治療。なぜなら、小細胞がんは高い割合で脳に再発するからです。
脳の入り口には「血液脳関門」があって、薬剤を脳に入りにくくしているからです。だから、肺で再発しないで、脳転移という形で再発することが多いのです。予防的全脳照射を行った方が、再発が少ないことは臨床試験で明らかになっています。つまり、治癒率が高くなるということです。
予防的全脳照射は放射線を10回照射します。1回2・5グレイの照射を1日1回。これを10日間なので25グレイの照射になります。平日のみの2週間です。入院して受ける患者さんが多いのですが、なかには通院で受けている方もいます。その患者さんの中には、午後は仕事をするという方もいて、人それぞれです。
実際に患者さんを診ていて、やはり予防的全脳照射を受けている患者さんの方が、再発の少ないことははっきり実感できています。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)