肺がんの60%を占める「腺がん」には、CT(コンピュータ断層撮影)画像に淡く写る「すりガラス状」のおとなしいがんが多い。そのがんが2センチ以下であれば、肺をより小さく切除する「縮小手術」が行われます。縮小手術には「区域切除」と「部分切除」があり、今回は部分切除を紹介します。

部分切除は今日行われている肺がんの手術の中で、最も切除部分が少ない手術。それは、がんの部分に加えて、がんの周辺部だけをくさび状に切除する方法です。

がんが2センチ以下の早期がんであるだけではなく、がんが肺の表面だけにできていることが大きなポイントになります。がんが少し肺の内部に入り込んでいるような状態では、部分切除の対象にはなりません。縮小手術は“身体に優しい肺がん手術”です。それは、肺を多く残すことができるから。もう1つは、縮小手術をどのような手術方法で行うか、という点です。

縮小手術の手術方法は「開胸手術」「胸腔(きょうくう)鏡手術」「ロボット支援下手術」で行われています。この中でキズの小さい手術方法は、胸腔鏡手術とロボット支援下手術。この2つは、1~2センチ程度の刺しキズを3~4カ所にあけるだけです。キズが小さいと呼吸に関わる筋肉の切断量が小さいので、その分、身体に負担がかかりません。

日本の肺がん手術は年間に4万件以上行われていますが、その70%が胸腔鏡を主体とした手術になっています。肺がんの手術をしても、“身体に優しい手術”を選択して、早期に社会復帰を目指してください。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)