新型コロナ感染症の流行で、がん検診の受診者が30・5%も減少しています。がん検診の受診を見送っている間に、進行がんになりかねない問題が出てきています。それは、がん検診だけではありません。私が行っている「行動変容外来」など、多くの診療科でも受診者数の減少は起きています。

私の患者さんでは、新型コロナの感染者数が激しいときはリモート診療、電話診療を希望されます。また、1カ月に1度受診されていた方が、「処方箋を3カ月にしてほしい」と。3カ月に1回の受診に変えた患者さんが多いのが現状です。

受診に変化が起きたことで、患者さんの健康問題としては大きく2種類が起こりました。

<1>生活習慣が崩れることで健康に対する対応がルーズになった

<2>病院に通わなくなったことで、知らないうちに病気が悪化

<1>は極めて生活がルーズになり、しっかりと生活習慣を維持しなければならないのに、逆にだらだらした生活になり、家飲みばかりするようになった。

<2>は血液検査などを常に行ってチェックしていたのに、それをしていないことで、病気の悪化をすぐに知ることができなくなってしまったのです。

<1>&<2>のような方々が、一定数いました。<1>の場合などは、体重が維持できていたはずなのに、自宅にばかりいることでどんどん体重はリバウンドし、受診前に戻っていきます。このようになると、生活習慣病などは改善へと向かいません。改善へと向かうには、良い方向への“行動変容”が何より重要なのです。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)

◆横山啓太郎(よこやま・けいたろう)1958年(昭33)生まれ。63歳。慈恵医大晴海トリトンクリニック所長。東京慈恵会医科大学卒。日本腎臓学会、日本透析学会でガイドライン策定の中心的な役割を演じ、薬物療法の効果と限界を痛感し、2016年(平28)に日本の大学病院で初めての行動変容外来設立。新しい試みを「健康をマネジメントする」などの著書で発信し、薬のみに頼らない健康メソッドを科学的に体系化している。21年から東京慈恵会医科大学大学院医学研究科健康科学教授も兼務。