私どもの「行動変容外来」で行うことは、ポイントを絞ると次の3段階になります。

<1>自分自身のマインド(意識)を変える

<2>自分を知り、どうありたいかを考える

<3>自分にちょうど良いことを習慣化する

マインドが第1段階なのは、ここを変えないとすべてが始まらないからです。健康マネジメントがなぜ必要なのか-。ここをしっかり理解していないと、新しい習慣を取り入れても続かず、ついつい挫折してしまいます。十分に理解してから新しい生活習慣を実践すると、自然とその習慣が身につきます。

私が行動変容外来を始める上でヒントになった言葉があります。それは、19世紀に活躍したアメリカの哲学者で心理学者のウィリアム・ジェームズの言葉。

「心が変われば行動が変わる。行動が変われば習慣が変わる。習慣が変われば人格が変わる。人格が変われば運命が変わる」

マインドの重要性を教えてくれました。心が変わらなければ行動は変わらないのです。マインドから変えてもらうことを意識して、行動変容外来の診療を始めました。すると、これまで私が口うるさくいっても効果のなかった患者さんたちが、何と新しい生活習慣を身につけられるようになったのです。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)

◆横山啓太郎(よこやま・けいたろう)1958年(昭33)生まれ。63歳。慈恵医大晴海トリトンクリニック所長。東京慈恵会医科大学卒。日本腎臓学会、日本透析学会でガイドライン策定の中心的な役割を演じ、薬物療法の効果と限界を痛感し、2016年(平28)に日本の大学病院で初めての行動変容外来設立。新しい試みを「健康をマネジメントする」などの著書で発信し、薬のみに頼らない健康メソッドを科学的に体系化している。21年から東京慈恵会医科大学大学院医学研究科健康科学教授も兼務。