2016年(平28)、大学病院初の「行動変容外来」をスタートさせたときに、この外来の医学的改善度がどれだけあるのか、それを客観的に知るべきと思いました。そこで対象にしたのが肥満の患者さんたちで、データを取り始めました。太っている患者さんの体重をどの程度落とせるか、これは見ていても最も改善度がわかりやすいのです。

その肥満を心配する中高年に多いのは、おなかの内臓まわりに脂肪が蓄積する「内臓脂肪型肥満」。この内臓脂肪型肥満になると、「高血圧」「糖尿病」「脂質異常症」といった生活習慣病が起こりやすくなります。

実際に、それらの生活習慣病が組み合わさってしまうと「メタボリック・シンドローム(以下、メタボ)」になり、動脈硬化を進行させ、心臓病や脳卒中が発症しやすくなります。これは、老化によって新陳代謝が低下して肥満が進み、やがて糖が処理できなくなって高血糖に、脂肪が処理できなくなって脂質異常症に、そして、塩分が処理できなくなって高血圧に--。結果、動脈硬化を引き起こしてしまうのです。

内臓脂肪型肥満だけの段階ではメタボではなく、あくまでメタボ予備軍。ただし、生活習慣を改善しなければ高い確率でメタボへと進んでしまいます。それを早い段階で知って対応することが重要ですが、実際にはメタボ予備軍の人は、「まだ病気の前段階だから大丈夫」と思っている人が多いのが現状です。メタボになってしまったら、若いころのようにカロリーを消化できないので、やはり、行動変容が重要ポイントとなるのです。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)