■変形性膝関節症は治るのか

変形性膝関節症の患者さんから「治りますか?」とよく質問を受けることがあります。この答えの前に、疾患が治ることと痛みが治ることは別であるというお話からさせていただきます。

変形性関節症の本体は、軟骨がすり減って骨が徐々に変形してきた状態であり、風邪や腹痛などが治ることとは違い、すり減った軟骨や変形した骨が元に戻ることは残念ながらありません。顔のシワが元に戻らないのと同じように、変形した関節は元通りに治ることはないのです。

ただ元には戻らなくても痛みは適切な治療によって軽減します。変形性関節症の治療の目的は「痛みなどの症状改善」と「関節変形の進行予防」です。そして運動療法を中心に、動かすために薬を使うことで多くの症状は改善します。

患者さんによっては痛みがゼロになると思って治療を受ける方がいますが、変形性膝関節症のような慢性疼痛の場合はゼロにならないことの方が多く、ゼロにしようと思えば思うほど痛みに敏感になり、痛みをいつも確認するようになります。すると痛みの感覚が研ぎ澄まされていき、常に痛みがある状態になることもあります。

しかし、痛みのフォーカスが他に向くと痛みに気づかずに、痛みを忘れやすくなるようです。「治りますか?」の答えは、「変形性膝関節症の疾患自体が治ることはありませんが、痛みを受け入れて、痛みに執着せずに運動していくと、痛みが軽減する可能性はあります」ということになると考えます。