家族やパートナーが発する口臭について患者さんから相談される機会は案外多いのですが、なかなか面と向かって指摘しづらい問題でもあります。

まずは自分で気づくことが大切なので、読者の皆さまには前回お話ししたセルフチェックをぜひ一度行っていただきたいと思います。判定に役立つよう、においの特徴についてもお話しします。他人からもっとも不快に感じられるのが「メチルメルカプタン」という歯周病由来のにおいです。

歯周病菌の酵素が産生するこの物質は毒性があり、日本では毒物として指定されているほどの威力を持ちます。野菜が腐ったような強烈なにおいですので、周りに悪影響を及ぼすだけでなく自身の体にも当然害があります。

毒ガスを体内に四六時中巡回させていれば、寿命が縮まることは容易に想定できますね。こうしたにおいを感じた場合は、ただちに歯科医院へ。肝臓などに慢性疾患を抱えている方の場合は「ジメチルサルファイド」という生ごみのようなにおいを発することがあります。

糖尿病の患者さんや、過度な糖質制限ダイエットといった偏った食生活を送っている方は「ケトン臭」といったツンとした甘酸っぱいにおいを放つこともあります。

その他、意外と知られていないのが舌の汚れから来る口臭です。舌の表面には無数の突起があり、細菌や食べかす、古くなった粘膜などの汚れがたまりやすい複雑な構造をしています。こうした蓄積汚れを歯科用語では「舌苔(ぜったい)」と呼んでいます。鏡の前で舌を出し、白っぽく見えたり黄色味を帯びている場合は専用のツールでケアをしましょう。

舌の汚れが原因であれば、「硫化水素」という卵が腐ったような特有のにおいを発します。温泉に漂っているあの硫黄臭をイメージしてみてください。