最近は高齢の患者さんでも美意識の高い方が多くなりました。義歯やインプラントに使用する人工歯はもちろんのこと、天然の歯を白くしたいという相談も増えています。

タバコやコーヒーのような嗜好(しこう)品の影響で歯が着色することは誰もが知っていますが、加齢によって歯そのものの色が変化するといった現象はあまり知られていません。

歯は表面から順番にエナメル質、象牙質、歯髄(歯の神経)といった3層構造で成り立っています。もっとも表層にあるエナメル質には、機械的な衝撃や温度の変化などによって細かいクラック(亀裂)ができます。このクラックは経年的に増えていき、線に沿って、あるいは露出した象牙質部分に色素沈着が起きます。これによって歯が全体的に褐色を帯びたように変化していきます。こうした外側からの変化だけでなく、歯の内部にも変化が起きるのです。

知覚をつかさどる歯髄(歯の神経)の周囲には、外からの刺激に対する体の防御反応として「第二象牙質」と呼ばれる部分がつくられます。これができると歯髄がおさまる空間が徐々に狭くなり、結果的に歯の表面から歯髄までの距離を遠ざけることができるのです。

この変化によって刺激が伝わりにくくなり、歯髄に加わるダメージを少なくするという実に精巧な仕組みです。エナメル質はもともと半透明な層なので、内側にある象牙質の色(乳白色から黄褐色までさまざま)が透けて見えています。つまり歯の色というのは、実質その人の持つ象牙質の色と考えて良いでしょう。

第二象牙質の形成によって象牙質全体の厚みが増し、黄ばみが強くなるのは自然の摂理ともいえますが、歯の明るさは表情を健康的でいきいきと見せる役割をもつため、印象を左右する大事なポイントでもあります。