寒暖差の激しい季節には、血圧の急上昇で、「収縮機能が保たれた心不全」(HFpEF/ヘフペフ)を起こしやすい。少し歩いただけで息切れがし、疲れやすいといった自覚症状がある。心臓の動きは一見正常なのだが、心筋が厚く硬くなって血液をうまく送り出せなくなるのだ。

「昨年、ヘフペフを含む心不全に対して、2つの新しい薬が承認されました。薬の治療で入院治療は約2割も減らすことができ、息切れや倦怠(けんたい)感などの症状をリセットすることは可能です」とは、東京都健康長寿医療センターの原田和昌副院長。循環器内科で心不全や高血圧の診療や臨床研究を行い、国内でのヘフペフの急性期の治療法確立にも貢献した。

「急性期治療や、乱れた心電図の心房細動の治療、さらに慢性期治療を行うことで、慢性心不全の状態は解消することができます」

心不全の薬のひとつは「SGLT2阻害薬」といって、2型糖尿病でも使用されている飲み薬だ。腎臓のブドウ糖再吸収を阻害し、尿と一緒にブドウ糖を出して血糖値を下げる仕組み。そんな血糖降下剤が、なぜ心不全を治すのか。

「私たちの研究では、ブドウ糖の代わりに心臓がケトン体による代謝をスムーズに行えるようになると、心臓の機能がよくなることがわかりました」

ケトン体は、肝臓で脂肪酸の代謝過程で生じるエネルギー源。心臓がケトン体を使用すると燃費がよくなり心不全が改善すると考えられている。さらに健康に役立つ話は。次回紹介する。