日本人女性が最も多く罹患(りかん)するがんは「乳がん」です。ただ、女性だけではなく男性も乳がんになります。乳がんの年間罹患者数は約9万8000人で、その0・5%程度が男性。つまり、男性の乳がん患者は年間450~500人程度となります。私も年に1人くらい男性の乳がん患者を治療しています。

男性で乳がんになった方は、家族になった方が多い。つまり、遺伝性乳がんの方が多いということです。男性患者の約2割が遺伝性。保険で遺伝性乳がんかを調べる検査が受けられるので、検査のメリット・デメリットについて、専門医に相談してみてください。その結果、陽性であれば、前立腺がんなどに罹患する確率も高いので、検診を積極的に受けて頂くことになります。また、お子さんに遺伝している可能性はひとりのお子さんにつき50%の確率になるので、成人後で良いので検査を受けるかどうか専門医と相談してみてください。

男性の乳がん患者の2割は遺伝性と言いましたが、8割は遺伝性ではないのです。男性の乳がんは乳首の真下にしこりができます。男性は胸のふくらみがないので、触るとしこりは分かりやすいことが多いです。家族に乳がんの方がいる場合は、自分で乳房を触ってみてチェックしてください。“自分の胸に関心を持つ”と早期発見につながります。

男性では胸が女性のように膨らむ「女性化乳房」もあります。これは肝臓が悪い場合や、胃薬などいくつかの薬を飲んでいることで膨らむことがあります。乳がんの場合はしこりです。その判断は難しいので、何か変だなーと思ったら男性も女性と同じ乳腺外科を受診しましょう。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)